読書日記672:小太郎の左腕


タイトル:小太郎の左腕
作者:和田 竜
出版元:小学館
その他:

あらすじ----------------------------------------------
一五五六年。戦国の大名がいまだ未成熟の時代。勢力図を拡大し続ける戸沢家、児玉家の両雄は、もはや開戦を避けられない状態にあった。後に両陣営の命運を握ることになるその少年・小太郎のことなど、知る由もなかった―。
感想--------------------------------------------------
 「のぼうの城」、「忍びの国」に続く和田竜さんの作品です。これも一気に読める本です。

時は戦国。西国の戸沢家を盟主とする林半衛門は一人の少年 小太郎と出会う。小太郎には神の才能が宿っていたー。

前二作に比べてフィクションの度合いが強い作品と感じました。出てくる武将、地名共に実在している場所ではない、と思います。唯一の例外は「雑賀衆」という言葉くらいですね。歴史好きの人ならすぐにピンとくる鉄砲集団です。

鉄砲の神のごとき才能を見せる小太郎。「小太郎の左腕」というタイトルではありますが、主人公は小太郎ではなく、半右衛門ですね。小太郎の神のごとき左腕の才能によって人生を狂わされる人々。そして人並みの生き方を手に入れるために多くの者を犠牲にした小太郎と、人に秀でた生き方を手に入れるために苦しみ続けた半右衛門。こうした男たちの生き方の物語、と言えるかと思います。

半右衛門と小太郎の生き方は対照的です。誇りを、仲間を、名誉を守るために人の道を踏み外し、そのことを悔い続ける半右衛門と、復讐のために己の能力を開花させ輝きを増す小太郎。そして小太郎の命を救う半右衛門と、その半右衛門と対峙する小太郎。二人の信念の絡み合いの描き方は見事と言えます。「のぼうの城」、「忍びの国」も読みましたが、私は本作が最も印象に残りました。

さて未読はあとは本屋大賞受賞作の「村上海賊の娘」ですね。大作ですが、これも読んでみたいです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス

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