読書日記666:忍びの国


タイトル:忍びの国
作者:和田 竜
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
時は戦国。忍びの無門は伊賀一の腕を誇るも無類の怠け者。女房のお国に稼ぎのなさを咎められ、百文の褒美目当てに他家の伊賀者を殺める。このとき、伊賀攻略を狙う織田信雄軍と百地三太夫率いる伊賀忍び軍団との、壮絶な戦の火蓋が切って落とされた―。破天荒な人物、スリリングな謀略、迫力の戦闘。「天正伊賀の乱」を背景に、全く新しい歴史小説の到来を宣言した圧倒的快作。

感想--------------------------------------------------
和田竜さんの作品は、なんと初めて読みます。映画化された「のぼうの城」をはじめ、本屋大賞を受賞した「村上海賊の娘」、「小太郎の左腕」と有名な作品ばかりで知ってはいたのですが、なんとなく読まないでいました。あまり深い理由は無いのですが、時代小説というと、司馬遼太郎さんや浅田次郎さんを読んでいたからかもしれません。

伊賀随一の腕を持つ忍び無門は妻のお国に頭が上がらない。伊賀に攻め込む織田信雄の軍に対して無門ら伊賀忍者はどう対抗するのかー。

時代小説は、史実に忠実に描きながら、そこにどのように味付けをするか、小説としての面白さを出すか、が作者の技量の腕の見せ所だと思います。史実を活かさずにエンターテイメントに振りすぎると歴史好きからは敬遠されてしまいますし、史実に忠実なだけだと味気なくなってしまいます。本作はそのバランスが非常に良くとれている、と感じました。これまでの様々な時代小説よりは読みやすくエンターテイメント性は抜群なのに、史実にも忠実であり、著者の主観、各登場人物の個性の活かし方などが素晴らしいです。ここまで読みやすい時代小説はあまりないのではないでしょうか。

時代小説の見せ場と言えばやはり合戦です。本作では「天正伊賀の乱」での伊賀忍者と織田軍の壮絶な戦いを描いていますが、ここが素晴らしく面白いです。織田軍随一の名将 日置大膳と無門や後の石川五右衛門こと文吾の戦い、忍びを束ねる十二家評定衆の百地三太夫など、個性的な登場人物と合戦の描き方に時間を忘れて読み耽りました。

目の前の儲け、つまりは金のことだけしか考えない伊賀忍者の描き方がとても面白いです。義理人情よりも金を優先し、金のためなら命を惜しまない伊賀忍者たちの生き方は滑稽であり、そのばかばかしさに最後で気付く無門の生き方は悲しく寂しくもあります。エンターテイメント抜群の本、と思いきや、最後にはドラマがあり、そこまで含めてとても満足のいく作品でした。なにより万人受けする本だと思います。未読ですが、「村上海賊の娘」が本屋大賞受賞したのも頷けます。

本作は映画かもされていますね。DVDもそのうち見てみようかと思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス

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