読書日記657:海の底


タイトル:海の底
作者:有川 浩
出版元:角川グループパブリッシング
その他:

あらすじ----------------------------------------------
四月。桜祭りでわく横須賀米軍基地を赤い巨大な甲殻類が襲った! 次々と人が食われる中、潜水艦へ逃げ込んだ自衛官と少年少女の運命は!? ジャンルの垣根を飛び越えたスーパーエンタテインメント! 番外編も収録。

感想--------------------------------------------------
有川浩さんの自衛隊三部作「塩の街」、「空の中」、「海の底」。そのうち、未読だった最後の一冊です。刊行はもう十年以上前になるんですね。

突如、無数の巨大エビに襲撃された横須賀。停泊中だった潜水艦「きりしお」の中に残された子供たちと二人の海自実習幹部生たちの運命はー。

「レガリス」と名付けられることになる巨大エビに蹂躙され、多数の死傷者を出す横須賀。まずこのインパクトが大きいです。人の背丈ほどもある無数のエビ。想像するだけで気持ち悪いです。

そして警察、自衛隊、米軍による連携とけん制。政治的な背景を綿密に描きつつ、そこには有川浩作品らしい気概のある人々のドラマがあります。米軍による爆撃をどう回避するか、現行法制下では発砲できない自衛隊と、レガリス相手に無力な警察機構。その歯がゆい状況をどう脱していくか。このあたりは読んでいてとても面白いです。

そして「きりしお」の中に取り残された子供たちと自衛官のドラマ。ここはこの著者の真骨頂ですね。図書館戦争からぶれない、甘すぎる描き方。でも本作ではこの甘さがエビのグロテスクさと少しミスマッチな感じもします。エビに蹂躙されてすさまじい数の死傷者が出ていて、まさに外界は生物災害(バイオハザード)であろうはずなのに、なんかその危機的状況と潜水艦内の個人的なあれやこれやのスケールが違いすぎるのかな、と感じました。後半になるとそうでもないんですけどね。

最後も実に有川浩さんらしい作品の終わり方です。やっぱり自衛隊ってすごいんだな、って感じました。自衛隊と警察では、武器が使えると使えないでは、格段の差があるんですね。。。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス

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