読書日記654:罪の声


タイトル:罪の声
作者:塩田 武士
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
昭和最大の未解決事件―「ギンガ萬堂事件」の真相を追う新聞記者と「男」がたどり着いた果てとは――。
気鋭作家が挑んだ渾身の長編小説。

感想--------------------------------------------------
本屋大賞でも上位に選ばれるなど、評価の高い作品です。読もう読もうと思いながら、ようやく読むことが出来ました。

三十年前に起きた企業脅迫事件、通称『ギン萬事件』。警察へ送付された受け取り場所指定の子供の声が、子供の頃の自分の声だと気付いた俊也はー。

名前こそ変えていますが、題材としているのは昭和の未解決事件、グリコ・森永事件です。私くらいの年代の人だったら記憶にあるのではないでしょうか。江崎グリコの社長を誘拐し、「どくいりきけん」の表示とともに青酸入りの菓子をばらまいた「怪人二十一面相」のあの事件です。本作は三十年のときを超えてあの事件の新たなる真相を探ろうとする、というものです。もちろんフィクションなのですが、その迫力は真に迫ります。

上述の俊也と、企画から事件を追う記者 阿久津の二人の視点から物語は展開していきます。細い糸をたどり、少しずつ事件の真相へと迫ろうとする俊也と阿久津。物語の構成は巧みで、実際にこのようなことがあってもおかしくない、と読者に感じさせます。フィクションなのですが、ノンフィクションのような迫力があるんですね。

物語は最終的に「録音された子供の声」の持ち主へと集約されていきます。実際事件の脅迫にも子供の声が使われていました。三十年前に子供だった声の主は、いまどのような生活を、人生を送っているのだろうかー。読みながらそのようなこと考えます。いまでも生きていたら四十代くらいでしょうか。記憶の底に眠らせながら暮らしているのかはたまたー。フィクションでありながら、そんなことに思いが馳せます。

読み進めていくと止まらなくなりますね。実際の「グリコ・森永事件」の真相はどのようなものだったのか、知りたくなります。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス

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