読書日記653:ZOO CITY 【ズー シティ】
タイトル:ZOO CITY 【ズー シティ】
作者:ローレン ビュークス (著), 和爾 桃子 (翻訳)
出版元:早川書房
その他:
あらすじ----------------------------------------------
南アきっての大都市ヨハネスブルグの一角に、犯罪者の吹き溜まり、ヒルブロウ地区があった。別名ズー・シティ―動物連れの街。当時、全世界で魔法としか思えない現象が起こっていた。すべての凶悪犯罪者は一体の動物と共生関係を結ばされ、その代わりに超能力をひとつ使えるようになったのだ。紛失物発見の特殊能力を持つジンジは、失踪した少女の捜索を依頼されたが、その行く手にはどす黒い大都市の闇が待ち受けていた!アーサー・C.クラーク賞受賞。
感想--------------------------------------------------
アーサー・C・クラーク賞受賞作です。おもしろいSFを読んでみたい!と思って手に取ってみました。
凶悪犯罪者が動物と共生関係を結ばされ、特殊能力を使えるようになる世界、紛失物探索の能力とナマケモノを持つ女性ジンジは疾走した少女シンガーの行く手を追うー。
これぞ洋風SF、という作品ですね。以前読んだ「ねじまき少女」に作品の雰囲気は似ています。しかしこちらの方がより読みにくく、ストーリーが吹っ飛んでいると感じました。和風SFのようにストーリーが筋道立っておらず、さらに欧米・アフリカ含めた独特な言い回しを和風に訳しているので、どうしてもついていきにくいです。
また、南アフリカ ヨハネスブルグが舞台ですが、まずこの舞台が日本とあまりにも違いすぎていて、ここの情景や一般感覚に慣れるまでにページが必要です。出てくる単語も彩り様々で、馴染みが無い分新鮮ですが、難易度が高いです。呪術師や魔法がまだ普通に信じられている都市のようですね。呪いや魔法薬といった言葉も普通に使われるので少し戸惑いがあります。
混沌の中に暴力と金が入り交じったような世界観ですね。どの和風SFとも違います。主人公も全く持って正義の味方ではないですし、物語の展開も、各キャラクターの言葉もすごく理解に時間がかかります。後半になるとだいぶ慣れてくるのですが、それまでが大変ですね。
「凶悪犯罪者が動物と共生関係を結ばされ、特殊能力を得る」という設定はすごく秀逸だと感じます。というか、このアイデアは本当にうまいと思います。主人公ジンジのナマケモノ、マングース、プードル、マラブーなど様々な動物連れがでてきて、どのキャラも全く一筋縄ではいきません。日本SFではありえない展開、文体で、すごく新鮮で刺激的でした。南アフリカの猥雑な風景描写もすごいです。しかし一方で人を選ぶ作品かな、とも思いました。最後まで読み切るのが本当に大変な作品でもあります。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C
レビュープラス
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