読書日記649:旅のラゴス


タイトル:旅のラゴス
作者:筒井 康隆
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

感想--------------------------------------------------
筒井康隆さんの本作は、ずっと前から読んでみたいと思っていた本です。SF作家の先駆けという印象と、「時をかける少女」のような鮮烈な作品を残してきた大御所、という印象ですね。本作はかなり評価も高いです。

ラゴスは旅をする。十代から年を重ね、時に奴隷となり、時に王となり、旅をする。その先にあるものはー。

印象に残る作品です。読み始めて最初は、ラゴスの旅の目的や、世界設定が全くわかりません。しかし読み進めるにつれて、世界設定やラゴスの目的などが次第に明らかになってくる、という作品です。物語で描かれるのはラゴスの一生です。最初は若々しかったラゴスも次第に年をとり、そして安住の地を得たと思いきやまた最後の旅に出ます。数年にも渡る奴隷生活に、同じように数年に渡る学習と王の生活。スケールが非常に大きく、薄い本ではありますが壮大な作品です。

旅をする目的、人生の変転、失われた文明と文明が人間にもたらすもの。そうしたことが頭をよぎる作品でした。奴隷になろうとも王になろうとも、淡々と目的を追い求めるラゴス。そして旅を終えて人生を振り返り、さらにまた新しい旅に出ることを考えるラゴス。どのような環境に陥ろうとも目的を持って進むラゴスは、人の生き方の一つの有り様だと感じました。繰り返しになりますが、印象に残る作品でした。

二十年以上も前の作品ですが、古くささは全く感じさせません。時をかける少女と同じように、本作も映画化されないだろうか、と考えたりもしました。派手な描写はないですが、心に残るいい作品です。まさに一人の男の人生を描いた小説、ですね。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス

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