読書日記648:いなくなれ、群青


タイトル:いなくなれ、群青
作者:河野 裕 (著)
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
11月19日午前6時42分、僕は彼女に再会した。誰よりも真っ直ぐで、正しく、凛々しい少女、真辺由宇。あるはずのない出会いは、安定していた僕の高校生活を一変させる。奇妙な島。連続落書き事件。そこに秘められた謎…。僕はどうして、ここにいるのか。彼女はなぜ、ここに来たのか。やがて明かされる真相は、僕らの青春に残酷な現実を突きつける。「階段島」シリーズ、開幕。

感想--------------------------------------------------
書店で目立つところに平積みにされていた本です。シリーズになっていますね。興味を持って読んでみました。作者は放送中のアニメ、「サクラダリセット」の作者でもあります。中高生向けの作品?と言えるかと思いました。

日常を過ごしていた七草は気付くと階段島と呼ばれる外界と隔絶された島の浜辺を歩いていた。なぜ自分がここにいるのか?わからないまま島での日々を過ごす七草は、幼馴染の真辺由宇と再会するー。

それまでの数ヶ月間の記憶を失い突然に階段島に住むことになった住人たち、決して外界に抜け出すことが出来ず「失くしたもの」を見つけたときに始めて外に出ることのできる階段島、島の上に住むと言われる魔女、とミステリー的な要素も多く含まれていますが、感傷的あるいは感覚的な文章で描かれていく本書はまぎれも無く青春小説です。

階段島の階段に描かれた落書き、小学生の住人、と様々な事件が起きますが、その根底にあるのは主人公 七草と幼馴染 真辺由宇の関係です。どこまでも真っすぐで自分の正義を信じて疑わないがために時に他人も自分も傷つける真辺由宇と、そんな彼女に振り回されながらも目を離すことができない七草。コミカルな要素は全くなく、切なく恋愛とも呼べないような二人の関係は、読み手に取っては心地よくもあります。

物語後半のストーリーは秀逸だと感じました。階段島と住人の正体、失くしものとは何か、なぜ住人たちはここにいるのか、どうしたら外に出られるのか、これらの回答はよく考えられていて、予想もしていなかったため素直に感嘆しました。真辺由宇の関係と七草の関係もいいです。どこまでも真っすぐな真辺由宇にそのままでいてほしいと願う主人公と、自分の正しいと思うことを貫こうとする真辺由宇。どこまでも純粋な二人の関係は次の物語に繋がるいいタイミングで幕を閉じます。極上の青春小説で、とくに中高生男子には支持があるでしょうね。私は物語の展開のうまさにしびれました。

物語の続きも読んでみたいですね。大人にとっては純粋すぎて甘い展開ではありますが、続編も気になるところです。もう少し若い純粋な気持ちの頃に読んでいると、もっとはまって、違った感想になったかな、とも思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス

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