読書日記646:ロマンス by柳広司
タイトル:ロマンス
作者:柳 広司
出版元:文藝春秋
その他:
あらすじ----------------------------------------------
ロシア人の血を引く白皙の子爵・麻倉清彬は、殺人容疑をかけられた親友・多岐川嘉人に呼び出され、上野のカフェーへ出向く。見知らぬ男の死体を前にして、何ら疚しさを覚えぬ二人だったが、悲劇はすでに幕を開けていた…。不穏な昭和の華族社会を舞台に、すべてを有するが故に孤立せざるを得ない青年の苦悩を描いた渾身作。
感想--------------------------------------------------
柳広司さんの作品です。柳広司さんと言えば、映画かもアニメ化もされた「ジョーカー・ゲーム」シリーズの著者として有名です。「ジョーカー・ゲーム」、「ダブル・ジョーカー」、「パラダイス・ロスト」、「ラスト・ワルツ」と続く「魔王」こと結城中佐を中心とした諜報機関の活躍を描いた本シリーズはとても面白く、全て読んでいます。
昭和初期、麻原子爵こと清彬は待ち合わせたカフェで一つの死体と行き合う。殺された男は誰なのか?犯人は?昭和初期の時代を背景に、清彬は東京の街を行くー。
時代背景こそ同じですが、爵位を持つ貴族を物語の中心に据えている点がジョーカー・ゲームとの大きな違いです。また、物語の展開もどちらかと言えばスローです。飽きることはなかったですが、この内容でこのページ数だと長い印象があります。
貴族の生き方、天皇の存在、禁止されていた共産系の考え方、特高などが本作ではよく描かれています。背景の描き方は深いですが、物語的にはあまり進まず、主人公の独考が多い印象でした。短編だったジョーカーゲームの一話を長編にした印象でしょうか。ストーリー展開で話しを長くするのではなく、時代背景の描き込みで物語が長くなっている印象で、時代背景はよくわかるのですが、物語的にはあまり深くなっていないと感じました。
物語の最後も、正直、個人的には満足のいくものではありませんでした。なんと言うか…救いがない。個人的にはこのような終わり方の本はあまり好きではありません。
ジョーカーゲームのような短編がやはり合っている作者さんなのかな、と感じました。トーキョープリズンは面白かったんですけどね。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C
レビュープラス
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