読書日記642:卒業


タイトル:卒業
作者:東野 圭吾
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
大学4年の秋。就職、恋愛に楽しく忙しい仲よし7人組・その中の一人、祥子がアパートの自室で死んだ。部屋は密室。自殺か、他殺か!?残された赤い日記帳を手掛りに、死の謎を追及する友人たち。だが、第二の全く異常な事件が起って…。錯綜する謎に挑戦する、心やさしき大学生・加賀恭一郎。卓抜な着想と緊密な構成で、現代学生のフィーリングを見事に描いた、長篇ミステリーの傑作。

感想--------------------------------------------------
東野圭吾さんの最初期の作品です。刊行は今から約三十年前です。手に取ってみたのは刑事 加賀恭一郎の学生時代が描かれた作品だからです。「麒麟の翼」、「新参者」などで有名で、阿部寛さんの役柄がピタリとはまった刑事 加賀。彼の学生時代が描かれた本書を未読のまま終わらせるわけにはいきません。

大学の女子寮で仲良し七人組の一人 祥子が死んだ。その死は自殺か?他殺か?そして第二の事件も発生するー。

さすがに三十年前という事で、時代を感じさせます。スマホもなく、パソコンさえあまり普及していなかった時代。コミュニケーションの道具は固定電話と手紙で、SNSはおろかEメールさえありません。時代背景こそ古いものの、しかしストーリーやトリックの描き方に古くささは感じさせません。絵を使った表現など、今の東野作品よりもトリックに重点が置かれていて、ミステリーとしての味わいが深い作品と感じました。

物語の展開に飽きる事もなく、最後まで一息に読み進める事が出来ます。この辺りは今の東野作品と変わらないですね。今の東野作品は切れるほどに洗練され研ぎ澄まされているのですが、本作はまだそこまでの切れは感じられません。しかし学生 加賀を中心とした人間関係の描き方や加賀のキャラクターなどは後々の作品にまで通じていて、加賀作品のファンとしては読むべき本だとおもいます。何より読み終えると本作の「卒業」の意味が重く読者にのしかかってきます。卒業とともに各々の道を行く仲間たち。それは前向きな面ばかりではありませんが、卒業とはそういうものなのでしょう。


本書を読んだら「赤い指」と「祈りの幕が下りるとき」の二作は加賀作品の中でもぜひ読むべき作品だと感じました。本作でも少しだけ描かれている加賀の母と父との関係が描かれた作品で、加賀の人間性がさらに深く描き込まれています。強さと優しさを併せ持った刑事 加賀恭一郎。彼の生き様の原点、といったら大げさかもしれませんが、学生時代が見れる、私にとってはいい作品でした。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス

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