読書日記640:蜜蜂と遠雷


タイトル:蜜蜂と遠雷
作者:恩田 陸
出版元:幻冬舎
その他:

あらすじ----------------------------------------------
私はまだ、音楽の神様に愛されているだろうか?ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。著者渾身、文句なしの最高傑作!

感想--------------------------------------------------
史上初、直木賞と本屋大賞を同時受賞した作品です。恩田陸さんは個人的にはまだ直木賞をとっていなかったのが不思議なほどの作家さんで、私も何冊も読んでいます。

芳ケ江ピアノコンクールに出場するコンテスタントたち。巨匠の遺した贈り物たる少年、新進気鋭の青年、かつて将来を嘱望された少女、最後の機会と賭ける三十間近のピアニストー。数多の神童、天才が揃うコンクールでコンテスタントたちはー。

五百ページ超、しかも二段組みという膨大な量の作品です。しかし飽きは一切感じさせません。一次予選、二次予選、三次予選、本選と舞台が進み、コンテスタントたちと審査員の間で視点が切り替わりながら物語は進んでいきます。各コンテストタント達のコンクールにかける意味、人生、コンクールや他の人の演奏を通じ、変化し成長していくコンテストタント達の描写がとてもいいです。

圧巻なのはその演奏の描写です。各コンテストタント達の奏でる音楽が聞こえてきそうな圧巻の描写です。本巻だけで様々な音楽を異なるピアニストたちが奏でるのですが、ピアニストたちの個性が明確に描き出されていて、しかもその描写が非常に緻密です。音楽というものを読者に明確に伝えることができている。これが本書の最もすごいところだと思います。音の描写。簡単なようで非常に難しく、実際に著者が音楽を聴き、理解できないとここまで描けないと思います。

恩田陸さんの作品はミステリー的な作品も多いですが、この作品にはその色はないですね。著者の作品で言うと、「チョコレートコスモス」に近いです。こちらは演劇を舞台としていますが、かつて読んで感じた感動を思い出しました。

恩田陸さんの作品は十冊以上は読んでいて、もう読み飽きたと思っていたのにまだまだですね。次作も楽しみに読もうと思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス

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