読書日記639:ハルビン・カフェ


タイトル:ハルビン・カフェ
作者:打海 文三
出版元:角川書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
福井県西端の新興港湾都市・海市。大陸の動乱を逃れて大量の難民が押し寄せ、海市は中・韓・露のマフィアが覇を競う無法地帯と化した。相次ぐ現場警官の殉職に業を煮やした市警の一部が地下組織を作り、警官殺しに報復するテロ組織が誕生した。警官の警官による警官のための自警団。彼らは「P」と呼ばれた―。第5回大薮春彦賞を受賞した、著者渾身の最高傑作。

感想--------------------------------------------------
裸者と裸者」から始まる応化クロニクルシリーズの著者である打海文三さんの初期の作品です。全六百ページ弱と膨大な量の作品で、読み応え十分です。

警察官の殺害が相次ぐ海市で市警の一部が組織した自警団「P」。解体されたはずの「P」に関連した殺しをきっかけとして、「P」とマフィア、市警の間で暗躍する一人の男の存在が浮上するー。

六百ページ近い分量、膨大な描写、交錯する様々な人間と、浮かび上がる過去の様々な事件、と正直、なかなか読みやすいとは言い難い作品です。人間関係や、同じ人物を別の名称で読んでいたり、と読んでいて「?」と混乱を来す場面もありました。しかしそれを補ってあまりある魅力が本作にはあります。一人の男を大勢の人間の視点から描き出したハードボイルドなのですが、その男の魅力、舞台となる海市の猥雑な描写、男を負う刑事や監察官、殺害された警官の息子などの人間模様、言葉がいちいち格好よくて、本作の魅力にはまっていきます。

圧巻はラストの百ページ弱ですね。正体を見せて動き出した男と様々な人物の係り、圧倒的なバイオレンス、とハードボイルドな展開が繰り広げられ、目が離せなくなります。物語が重厚で濃密で、ノワールの香り十分です。読みやすさだけでいえば、応化クロニクルの方が読みやすく、展開もわかりやすいのですが、重厚さでいえばこちらの作品の方が何倍も厚いですね.大藪春彦賞にふさわしい作品だと思います。

物語の結末も描かれてはいるのですが、三人称の視点から描かれているためか、どことなく続きを予感させます。この辺りの狙いもうまくいっていると感じます。打海文三さん、だいぶはまってきました。また別の作品も読んでみたいと思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス

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