読書日記636:ちょっと今から仕事やめてくる


タイトル:ちょっと今から仕事やめてくる
作者:北川恵海
出版元:
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ブラック企業にこき使われて心身共に衰弱した隆は、無意識に線路に飛び込もうしたところを「ヤマモト」と名乗る男に助けられた。同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けてもらう隆だが、本物の同級生は海外滞在中ということがわかる。なぜ赤の他人をここまで?気になった隆は、彼の名前で個人情報をネット検索するが、出てきたのは、三年前に激務で自殺した男のニュースだった―。スカっとできて最後は泣ける、第21回電撃小説大賞“メディアワークス文庫賞”受賞作。

感想--------------------------------------------------
「ちょっと今から仕事やめてくる」
このタイトルが気になっていた本です。第21回電撃小説大賞“メディアワークス文庫賞”受賞作でもあります。

来る日も来る日も部長に怒鳴られ、ぼろぼろになるまで仕事して、遂にある日、ふらふらと線路に落ちかけた隆は、ヤマモトと名乗る男に助けられる。正体不明のヤマモトは隆と意気投合するがー。

読み終えてすっきりとする作品です。
こういうことは本当にあってもおかしくないかも、と思わせる作品でもあります。少なくとも本作の主人公と同じような境遇の人は世の中に山ほどいると思います。かく言う私もその一人でした。ブラック企業、パワハラ上司—。昨年の某広告大手代理店での事件をきっかけとして、この手の話は脚光を浴びてもいますね。

「お前の人生は誰のためにあると思う?」

この一言に全てが凝縮されていると言っていいかと思います。少し考えれば、この答えには誰もが辿り着けると思います。でも仕事漬けになって普通の精神状態じゃないと、この答えに辿り着けないんですよね。「仕事なんて」と割り切ること。「仕事なんて」って割り切れる精神状態のうちに会社を辞めること。逃げることは恥ずかしいことでもなんでもないということ。人生において本当に大切なことはなんなのか。仕事よりも大切なことは山ほどある。それを日頃から理解しておくことが何よりも大事です。世の中にひどいことを言う人は山ほどいる。だけど理解を示してくれる大切な人も必ずいる。繰り返しになりますが、それを理解しておくことが何より大事だと気付かせてくれる本です。

「ちょっと今から仕事やめてくる」。この軽さがいいですね。「仕事辞めるなんてたいしたことじゃない」。そう思わせてくれるこの軽いタイトルはセンスいいです。また本作は漫画化も、実写映画化もされます。実写映画はちょうど今日から公開ですね。実写映画でヤマモトを演じるのは福士蒼汰さん。もうこの配役はばっちりだと思います。小説の印象そのままですね。


ヤマモトと出会えた隆は幸運です。実際にはこの主人公のような幸運に出会える人は少ないと思います。でも、家族をはじめ、きっとあなたのことを大切に思う人はいる。そのことに気付かせてくれる作品です。いい本を読みました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック