読書日記635:覇者と覇者


タイトル:覇者と覇者
作者:打海 文三
出版元:KADOKAWA / 角川書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
戦争孤児が見る夢を、佐々木海人も見る。小さな家を建て、消息不明の母を捜し出して、妹と弟を呼びよせて、4人で慎ましく暮らすという夢を。8歳のころから見つづけてきたささやかな夢だ。そして応化19年6月、ふたたび戦争の季節がおとずれる。―突撃する。蜂起する。俺たちは戦争に勝利する―『裸者と裸者』『愚者と愚者』に続く、“応化クロニクル三部作”完結編。

感想--------------------------------------------------
打海文三さんの応化クロニクル三部作の最後の作品です。著者急逝のため未完となった作品です。

<我らの祖国>との首都圏最終決戦を控えた海人。流されてきた多くの血の果てに、戦争孤児が夢見た平和な日々は訪れるのかー。

裸者と裸者」、「愚者と愚者」の圧倒的な迫力そのままに物語が展開していきます。迫撃砲、AK、機関銃がうなりを上げ、攻撃ヘリが装甲車を蹂躙していきます。描かれているのは内戦激化する彼の地よりもひどい泥沼の戦闘を繰り広げる日本列島なのに、そこに生きる登場人物たちは皆、例外なく格好いいです。

「登場人物の格好よさ」
三作読み通して改めて痛烈に感じるのはまさにここです。自分に素直で正直でありながら判断にはためらいを見せない優秀な司令官となった海人、欲望に正直で誰からも好かれるパンプキン・ガールズのボス 椿子の二人を中心に数えきれないほどの人々が描かれていますが、誰もの言葉が洗練されていて、無駄がなくて、格好いい。瞬時の判断が生死を分ける戦時を生きる人々は、皆洗練されてここまで格好良くなるのだろうか、なんて考えたりします。それほどまでに皆格好いいです。

さらに一つあげるとすると、「文体の格好よさ」も一級品ですね。簡潔で無骨で、それでいてすっきりとしていて。何気なく読んでしまいますが、この飾り気のない文が連続することで物語の密度が増している気がします。これもシリーズ通じての感想です。

物語は戦後の統治を脅かすテロとの戦闘の合間で唐突に終わりを告げます。「未完のままでいい」なんてことはとても言えません。最後まで、この戦闘が終わりを告げるまで、読み切りたかった、というのが本音です。現実でも終わりを見せないテロとの戦いに、著者がどのような形で終止符を打つつもりだったのか。読んでみたかったです。(物語の途中で多くの主要登場人物が死んでいっているため、最悪の終わり方も想定でき、怖い部分もありますが。。。)

目立たないですが、傑作です。最後に大森望さんが解説を書いていますが、まさにその通り。「圧倒的に面白い」作品です。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラス

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