コミック日記147:ファイアパンチ4
タイトル:ファイアパンチ 4
作者:藤本タツキ
出版元:集英社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
ベヘムドルグから逃走する民たちを率いる通称“お頭”は、追手の兵に応戦するが劣勢に。しかし突如現れた謎の槍使いの女と仮面の男が加勢し戦況は一変する。一方アグニは、彼を崇拝する者たちのため再びある行為を余儀なくされ!?
感想--------------------------------------------------
漫画大賞2017第三位にも選ばれた、いま乗っている作品です。でも本屋ではあまり見ません。きっとマニアックすぎるからでしょうね。ぶっ飛んだ作品です。
氷の魔女と呼ばれる存在により氷付けにされた世界。生まれながらに奇跡を有する人間「祝福者」として生まれ、再生の力を持つアグニは、消えない炎に身を包まれながらも殺された妹の復讐の旅に出る。ベヘムドルグで奴隷を解放した事から神として崇拝される事になったアグニはー。
「この世界に負けたくない」
この作品の中心を貫くのはもうこのひと言だけです。氷付けにされ、飢餓に苦しみ、奴隷として差別され、わけもわからず死んでいく世界。そんなところで死んでたまるか、という主人公の思いだけがひたすらに強く伝わってきます。そしてそんな世界をぶっ壊す、対象を燃やし尽くすまで消えない炎に包まれたアグニの必殺技が「ファイアパンチ」。全てをぶっ壊すパンチです。
登場人物にまともな人間はほとんどいません。全身を消えない炎に包まれ、常に燃えながらも再生することで生きていくアグニ、アグニを主人公とする映画を取りたいと願う、変態で凄腕で再生能力を持つトガタ、そして氷の魔女に、アグニの妹そっくりのユナ。本巻では露出狂キャラがふたりばかり増えました。登場人物は変態ばかり、意味不明で残虐な殺戮が繰り返されて、登場人物の言葉はものすごくぶっ飛んでいるのに、ときどきすごくリアルで読み手に迫ります。
「この世界に負けたくない」
この言葉はまさに作者の言葉そのまんまだ、と気付きます。こんな世界ぶっ壊してやる、破壊的な作品作ってやる、そんな凄みと迫力が伝わってくる本です。万人受け、という言葉からは最も遠い作品ですが、すっごい迫力ではまる人ははまります。「進撃の巨人」も最初はこんなだったなあ、とか思い出したりもします。理屈なんか抜き、意味不明で不条理で、ぶっとんでて、でも読み手を、世界をぶっ壊す作品。こういう作品が新しい何かをつくるんだろうなあ、とかって思ったりします。
展開も激しくて、急で、ぶっとんでて、いい感じです。スケールも壮大になってきて、星を巻き込んだ戦いになりそうで、今後の展開がすごく楽しみです。縮こまったり、理屈の帳尻あわせになんて走らないでほしい、このままぶっ壊れたまま、どこまで突っ走れるのか見てみたい、そんなことを期待させる作品です。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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