読書日記633:ふたりの距離の概算
タイトル:ふたりの距離の概算
作者:米澤 穂信
出版元:角川書店(角川グループパブリッシング)
その他:
あらすじ----------------------------------------------
春を迎え高校2年生となった奉太郎たちの“古典部”に新入生・大日向友子が仮入部する。千反田えるたちともすぐに馴染んだ大日向だが、ある日、謎の言葉を残し、入部はしないと告げる。部室での千反田との会話が原因のようだが、奉太郎は納得できない。あいつは他人を傷つけるような性格ではない―。奉太郎は、入部締め切り日に開催されたマラソン大会を走りながら、心変わりの真相を推理する!“古典部”シリーズ第5弾。
感想--------------------------------------------------
アニメ実写化もされた「氷菓」から始まる古典部シリーズの第五作目です。いまは最新作で第六作目「いまさら翼といわれても」が刊行されていますね。
星ヶ谷杯こと、神高行事の一つ、二十キロメートルのマラソン大会に参加したホータロー、える、里志、伊原。ホータローは走りながら、新一年生の大日向が古典部入部をやめた理由を考えるー。
相変わらずのクオリティーです。いつもの四人の個性といい、ちりばめられた伏線から日常の些細な出来事を推理して解き明かすホータローの洞察といい、鉄板のシリーズです。今回は二十キロの距離を走りながら、その道中でホータローを追い越していくえるや伊原たちと短い会話を交わしながら推理を深めていきます。過去の回想もちりばめられていますが、「マラソン中に推理する」というこの発想がいかにも米澤穂信らしいです。
「二人の距離の概算」。このタイトルが二つの意味を持つということが最後になってわかります。このあたりの伏線もうまい。そしてホータローの一人称なのですが、省エネ人間であるホータローの個性が文章の隅々に表れていて、これもおもしろいです。
しかし、里志と伊原、付き合うことになったんですね。これが何よりの驚きです。前作からは信じられない展開ですが…。「『ごめんなさい』しか言えないかわいそうな生き物」というのが個人的には超絶ヒットしました。
実写映画化もされるようですが、正直これには期待していないです。配役を見ても、ちょっとちがうかな、という印象はあります。ビブリアのドラマ化もそうでしたが、なんか事務所の力関係が見えるようであまり原作とファンが大事にされていない気がして少し嫌です。こうした意見を払拭するくらいいいできだといいのですが。
次回作もそのうち読んでみる予定です。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
この記事へのコメント