読書日記628:君の膵臓をたべたい



タイトル:君の膵臓をたべたい
作者:住野 よる
出版元:双葉社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
偶然、僕が拾った1冊の文庫本。それはクラスメイトである山内桜良が綴った、秘密の日記帳だった―圧倒的デビュー作!

感想--------------------------------------------------
自分はよく本屋に行くので、なんとなく売れ筋の本はわかるのですが、本書もその一冊でした。目立つところに長らく並んでいる本であることと、その奇妙なタイトルに惹かれて読んでみました。昨年度の本屋大賞二位の作品ですね。

全く予備知識なしに読みました。そのタイトルと、落ち着いたカバーの印象から大人向けの本かと思っていましたが、読み始めてすぐに若者向け、特に登場人物と同じ十代の少年向けの本と感じました。主人公は根暗で内向的で友達のいない少年。そんな少年がクラスの中でも人気のある少女とふとしたことで出会いーという話。よくある話だけど、実際にはない話だよな、四十も超えるとこうした話は読んでて寒いだけでなくて辛いよなーと思いながら読んでいました。現代版の「いちご同盟」みたいだな、なんて思ったりしていました。

しかし後半に入っていくと、この本はそんな簡単な本なんじゃない、っていうことがわかります。張られた伏線もさることながら、二人の関係に、二人の想いと言葉に、久しぶりに清々しい気持ちになりました。少しだけ引用させてください。


「偶然じゃない。運命なんかでもない。君が今までしてきた選択と、私が今までしてきた選択が、私たちを会わせたの。私達は自分の意思で出会ったんだよ。」

「怖がらなくてもいいよ。なにがあっても人と人はうまくやっていけるはずだからね。」


物語の中で語られるこれらの言葉には本当に説得力があります。いつも一緒にいたのにお互いの方を向いていることに最後の最後でようやく気づくことのできた主人公。そしてその思いを表す言葉「君の膵臓を食べたい」。極上の青春小説ですが、私のような大人が読んでも感動する作品です。読んでよかった、と素直に思うことのできる本でした。

本作は実写映画化されるそうです。当然だな、と感じます。一方でアニメ映画化されてもいいなあ、とも感じます。絶賛されている「君の名は。」と切り口は違いますが、美麗な映像として作られればこちらも間違いなく好評になるはずです。

自分と違う人間への憧れ、恐れとの別れ。おそらく青春時代には誰しもが感じたであろうこれらの感情をうまく扱っていて、最後まで本当に清々しくて、いい本でした。この方の他の作品も読んでみようと思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):SS
レビュープラス

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