読書日記624:裸者と裸者(下) 邪悪な許しがたい異端の



タイトル:裸者と裸者(下) 邪悪な許しがたい異端の<〈応化クロニクル〉><〈応化クロニクル〉> (角川文庫)
作者:打海 文三
出版元:KADOKAWA / 角川書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
両親の離婚後、月田姉妹は烏山のママの実家に引越し、屈託なく暮らした。そして応化九年の残酷な夏をむかえる。東から侵攻してきた武装勢力に、おじいちゃんとおばあちゃんとママを殺されたのだ。十四歳の姉妹は、偶然出会った脱走兵の佐々木海人の案内で、命からがら常陸氏へ逃げ出した。そして――戦争を継続させているシステムを破壊するため、女性だけのマフィア、パンプキン・ガールズをつくり世界の混沌に身を投じた――。

感想--------------------------------------------------
打海文三さんの「裸者と裸者」の下巻です。このシリーズは「応化クロニクル」と呼ばれているらしいですね。続編として「愚者と愚者」、「覇者と覇者」があります。著者急逝のため未完なのが残念ですね。

戦乱の東京を生き抜くために月形姉妹は女子だけの戦闘集団パンプキン・ガールズを結成する。東京UF、政府軍、反政府軍、2月運動など様々な勢力が交錯する”シティ”での戦闘は苛烈さを増していくー。

読み手をぐいぐいと引っ張って読ませる本です。多くの戦闘集団と登場人物が交錯し、立ち位置や勢力図が目まぐるしく変わるのですが、さほど混乱をきたさないのは上巻があるからでしょう。佐々木海人という個人が幾つもの戦場を潜り抜けて頭角を現していく上巻に対し、下巻は月形姉妹という二人の女子が主人公ですが、その冷徹さや壊れ方は海人にも負けません。

下巻まで読んでようやくわかりましたが、本作の著者の文体は「無骨」と言っていいかもしれません。飾りが全くなく、簡潔で、冷徹で、事実を淡々と描いていきます。想像や感情といった不確かなものの入り込む余地のないその文体は戦場の描写によくあっています。また、戦場に生きる月形姉妹たちの生き方にもあっていますね。現実、生と死、そういった生々しいものの痛さが伝わってくる文体です。

東京、神奈川の一画を舞台とした物語は現実的な描写でぐいぐいと進んでいきます。流される血と失われる仲間。そして衝撃の結末。どこにも救いなどなく、その救いのなさがまた一方で清々しくもある小説です。特にラストの死体屋の言葉がそれをよく表していると感じました。幻想も感傷も期待も希望もなく、あるのはただ一瞬一瞬の現実だけ。そのような戦場の描写がすごくうまく読み手を引き込む作品です。

なかなかジャンル分けの難しい作品ですね。青春小説というには戦場の描写が生々しすぎるし、ラノベというには硬派すぎます。戦争小説かと言われると月型姉妹やパンプキン・ガールズの描き方はまた少し違う気もします。


きっとこれが「打海文三」の作品で、ジャンル分けなんて不要なんでしょうね。伊坂幸太郎さんが「3652」で絶賛していたのが少しわかる気がします。他の作品も読んでみようと思います。特に「私の愛したゴウスト」が期待大ですね。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス

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