タイトル:ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える
作者:ラズロ・ボック (著), 鬼澤 忍 (翻訳), 矢羽野 薫 (翻訳)
出版元:東洋経済新報社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
君は、最強企業が欲しがる人材なのか?未来の新しい働き方のすべて、ベストチームをつくるアドバイス―世界最高の職場を設計した男、グーグルの人事トップが、採用、育成、評価のすべてを書いた。
感想--------------------------------------------------
最近話題のビジネス書です。あのGoogleの人事トップが採用、育成、評価のすべてについて語った本として有名です。全五百ページ以上と読み応えたっぷりです。
本書を読み終えて感じた事は、「これはGoogleだからこそできることだ」というものと、「これだからGoogleたり得ているのだ」というものです。人事、採用、育成、評価について書かれた本、というよりも、GoogleをGoogleたらしめているGoogleの文化について書かれた本、という事ができるかもしれません。もちろん他社も教訓に出来る点は多くあります。しかし「こんなこと他の会社には無理だろ」と思う箇所も多いです。飛び抜けた業績を上げているからこそ出来る点も多いですし、逆にこれだから飛び抜けた業績を上げられているのだ、と思う箇所も多いです。
本書を読んで全般的に感じる事は、Googleという会社は従業員を善なる者として最大限尊重して扱っている、ということです。徹底的な管理を施す会社と無制限の自由を与える会社があったとすると、Googleは限りなく後者に近いです。それで成り立つのは、世界の中でもレベルの高い頭脳を持つ人々が多く集まっている点、採用に凄まじく時間をかけ、間違いのない人を入社させている点などが挙げられると思います。「自分の仕事に意味を求める」。これは誰もがそうですが、そのことをうまく仕事のモチベーションとして昇華させる仕組みを作り、さらに人の持つ「善意」を信頼して限りなく強制を排除しているGoogleの文化は会社としてもコミュニティとしても理想に近いと感じます。
マネージャーが権利を手放しメンバーの自主性を尊重する、マネージャーがメンバーに寄りそう、食事と通勤バスは全て無料、社内に様々なコミュニティが存在、などなどGoogleの特徴は非常に多いです。しかしその多くが「社員を善意を持った個人として尊重する」という点からスタートしている点が素晴らしいと感じます。そのような理想が理想のまま通っている点は奇跡に近いかもしれません。
「社員に満足してもらう」ひょっとしたら人事の究極の目標はこのひと言なのかもしれません。そしてこの目標を達成するためには、「人間はどのようなときに満足するのか?喜ぶのか?」というところや、さらに深く、「人間とはどのようなものか?」まで掘り下げる必要がありそうです。そしてそのような観点から社員を見ると、違った見え方が出来るように感じました。何より私に取っては、たいていの日本企業に存在する「既得権益層」がいないことが素晴らしく感じました。何もしないのに権力を振り回して高い給料をもらう人たち。そのような人たちが自然と淘汰される仕組みが作られているようにも感じました。
人事、育成、採用、評価の本と言うよりも、文化、コミュニティのあり方、作り方について書かれた本と言った方がいいかもしれませんね。私は本書の前半よりもむしろ後半の文化的側面について書かれた章の方が面白く読めました。五百ページ超となかなかの読み応えですが、読んで損はない本です。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
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