タイトル:IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト: 人工知能はクイズ王の夢をみる
スティーヴン・ベイカー (著), 金山博・武田浩一(日本IBM東京基礎研究所)
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あらすじ----------------------------------------------
IBMがその叡智を結集して開発した、自然言語を理解する驚異のスーパーコンピュータ「ワトソン」。今年2月に全米クイズ王を破り優勝するまでの、技術者の激闘1500日を描く「プロジェクトX」流ドキュメント!
感想--------------------------------------------------
いまではテレビのCMでもよく見かけるようになったIBMの「ワトソン」。人間の言葉を解する脅威的な能力を持つ人工知能、というイメージが強いですが、そもそもどのようにできあがってきたものなのか、知りたくて本書を読んでみました。
時はIBMのスーパーコンピューター「ディープブルー」がチェスの世界チャンピオン、ガルリ・ガスパロフを破った時代までさかのぼります。チェスの世界チャンピオンを破る事を達成したIBMのメンバーは、次の目標をどこに定めるか、について議論を重ね、有名なクイズ番組「ジョパディ」のチャンピオンを破り優勝する事を目的とします。
その道筋は並大抵でない事が本書を読むとよくわかります。チェスト異なり自然言語を「理解」し、問題の内容に沿った回答を導き出すためには、これまでと異なったアプローチが必要となります。機械に言語を「理解」させることができるのか?という内容の説明を読んでいると、その難易度の高さがひしひしと伝わってくるとともに、人間の脳がどれだけ高度な処理をこなしているのか、それもよくわかります。例えば二、三歳の子供でさえもできる形状と名称のタグ付けという単純な処理、様々な動物やを見て、その名称を答えさせる事さえも、非常に難しいことだということがわかります。
最初はジョパディの優勝者には遥かに及ばない成績しか残す事の出来なかったワトソンは、デイビッド・フェルーチ率いるチームが強化を重ねる事で、遂にジョパディのチャンピオンを破るまでに強くなっていきます。本書にもその様子が書かれていますが、出された問題に的確に答えていくコンピューターの姿は圧巻ですね。知識だけでなく、「ジョパディ」というクイズゲームに勝つためのゲーム戦略さえも適切に創り込まれているあたり、すごさを感じます。
個人的な感想として、本書を読む限り、人工知能が人間の頭脳を完全に上回るにはまだまだ時間がかかりそうです。しかしある分野だけであれば、比較的早く人間の頭脳の先を行く事ができ、人の頭脳を補完する役割を果たせるのではないか?と感じました。人工知能はホットな話題ですので、また関連本を読んでみようと思います。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
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