タイトル:血と霧 2 無名の英雄
作者:多崎礼
出版元:早川書房
その他:
あらすじ----------------------------------------------
ロイスが救った少年ルークはオルタナ王家の王子だった。彼に、4年前に行方不明になった娘ミリアムの面影を見るロイス。一方ルークもまた血の分析官になるという夢を抱きはじめる。そうして穏やかな日々を取り戻したふたりだったが、女王シルヴィアと反勢力の対立に巻き込まれたことで状況は一変する。ロイスとルークの過去に秘められた、残酷な真実とは?血に支配された国で葛藤する者たちを描く、贖罪と祈りの完結篇。
感想--------------------------------------------------
一巻の続きとして読んでみました。本巻で物語は一度完結しています。
ロイスが助けたルークはオルタナ家の王子だった。そしてロイスとルークは再び様々な事件に巻き込まれていくー。
本巻は「無名の英雄」、「血の記憶」、「虹の彼方へ」の三章から構成されています。「無名の英雄」が一つの事件を、「血の記憶」がロイスの過去を、「虹の彼方へ」がまとめ的な意味合いの章となります。本巻で最も印象に残ったのは「血の記憶」です。ロイスの過去、グローリア姫との出会いと別れが描かれた章です。心の機微も含めてこの章は読んでいて心に残る箇所もありました。
他の部分ですが、これは上巻の感想にも書いた事ですが、個人的にはやはりどうしても主人公のロイスに感情移入ができません。ルークの事を可愛がっていたかと思うと、突然、逆上して足蹴にしたりします。理由は説明されるのですが、感情の起伏やスイッチの入る箇所が滅裂で、それでいて思い込みや感情、思考の表現描写は多く、若干壊れ気味のような人に思えてきます。これも上巻にも書きましたが、思考表現の描写が過多なのですね。だから危うい人に思えてしまいます。
あとストーリーも個人的にはあまり好きになれませんでした。結局、誰一人幸せにならず、主人公のロイスだけが自己陶酔して終わっている感があります。こんな終わらせ方しかかなかったんでしょうかね…?それこそ主人公が頭を撃ち抜かないのが不思議なほど悲惨な終わり方のような気がしました。
世界観はいいです。相当に創り込んであって、ファンタジーRPGの王道という感じで、とても好きです。でも登場人物が画一的で、ティルダ、ヴィンセント、ロイスなどみんな似たようないい人なので、キャラが十分に立っておらず、せっかくの世界観が生きていないのが残念です。
本巻で一度終結しますが、この後も続くのでしょうか…?世界観はとてもいいので、この後どうつなげていくのか、少しだけ興味はあります。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C
レビュープラス
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