読書日記609:血と霧1 常闇の王子



タイトル:血と霧1 常闇の王子
多崎礼 (著), 中田春彌 (イラスト)
出版元:早川書房
その他:

あらすじ----------------------------------------------
血の価値を決める三属性―明度、彩度、色相―による階級制度に支配された巻き貝状の都市国家ライコス。その最下層にある唯一の酒場『霧笛』で血液専門の探索業を営むロイスのもとに、少年ルークの捜索依頼が持ち込まれた。だが両親だと偽る男女は、事件の核心部分を語ろうとしない。価値ある血を持つと思われる少年に自らの過去の因縁を重ねたロイスは調査を始めるが、それは国家を揺るがす陰謀の序章に過ぎなかった。

感想--------------------------------------------------
この方の著書は初めて読みます。面白いSFやファンタジーを読みたい、と思っていたのと、表紙の絵とハードボイルドっぽい雰囲気に惹かれて読んでみました。

巻貝の最下層で探索者として暮らすリロイスのもとには様々な仕事が舞い込むー。

本作で最も魅力的だと感じられたのはその世界観と設定です。巻貝を中心とした国家群、国を仕切る冷酷な女王、その最下層に住む主人公、血の三属性と血の明度によって明確に区別される住民たち、そして血の属性によって異なる特殊能力などなど。世界観とその設定はロールプレイングゲームのようで、ゲーム好きには堪りません。狼男や暴君竜といった言葉も出てきて、この先の世界の広げ方が非常に楽しみです。

一方で残念なのは登場人物の個性や描き方、その関係性です。残念ながら魅力的だと感じられる登場人物が一人もいません。主人公のリロイスは始終不機嫌で、「自分で頭を吹き飛ばした方がマシだ」みたいなことを言っていたり、よくわからないプライドで怒ったり、かと思えばルークには変にやさしかったり、と全く感情移入できません。

そしてその周囲を固めるヴィンセントやルークといったメンバーも、なぜにそこまで下手に出る?と思うくらいにリロイスに気を使っています。また特にリロイスとヴィンセントの関係性はべたべたしていて、気持ち悪いです。世界観はハードボイルドを目指しているのに、キャラクターが浮いてしまっていますね。

また、これだけの世界設定をしているのに物語はさほど前に進みません。三つの章で構成されていますが、「ちょっとした探し物」が多く、世界観を活かしきれていない気がします。これはこの先に期待ですかね。

あと、最後になりますが、文章がやたらと冗長です。リロイスの心情の独白的な台詞や、ルーク、ヴィンセントとの会話が長すぎ、テンポが悪いです。文章を重ねることで却って読み手に伝わりにくくなっていると感じました。

登場人物の中で唯一、なんとか魅力を感じたのはギィですかね。常に冷静な調血師。彼の物語は読んでみたいと思いました。

ここでも評してきたSFの名作と比べるのは酷ですが、ちょっと厳しいです。でも二巻で一区切りのようなので、次巻も読んでみようと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C
レビュープラス

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