タイトル:ローマ人の物語〈42〉ローマ世界の終焉〈中〉
作者:塩野 七生
出版元:新潮社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
屈辱的な首都の劫掠の後、帝国の本国たるイタリア半島には一時的な平和が訪れた。ガリアでの地歩を固めたい蛮族が共食い状態になったためだ。しかし、ホノリウスが長い治世を無為に過ごして死んだのち、権力は皇女や軍司令官らの手を転々と渡り、二年にもわたる内戦状態にさえ陥った。そして運命の四七六年、皇帝が蛮族に手によって廃位され、西ローマ帝国は偉大なる終わりの瞬間をもつこともなく、滅亡の時を迎えることになった―。
感想--------------------------------------------------
ローマ人の物語の四十二巻、「ローマ世界の終焉」の中巻です。塩野七生さんの大作、「ローマ人の物語」も残すところあと一巻となりました。
本巻ではスティリコ亡きあとの蛮族に蹂躙されていくローマ世界が描かれています。フン族の王 アッティラ、ヴァンダル族の王、ゲンセリック(ガイセリック)によって蹂躙されていく西ローマ帝国は東ローマ帝国と共闘するもむなしく、結局は一つにまとまることができずに滅んでいきます。
「ローマ人の物語」ということでローマを首都とし、共和制、帝政と移り変わり一千年以上にわたり反映してきたローマはついに滅びますが、その終焉の姿には華々しさもなく、消えるような最後にどこかさびしさも感じますね。
本巻の最後に書かれている、カルタゴ滅亡時のローマの将 スキピオ・エミリアヌスの言葉と、カルタゴの滅亡時と比較した描写が特に秀逸ですね。
「人間に限らず、都市も、国家も、帝国もいずれは滅亡を運命づけられている」
この言葉は残りますね。歴史を振り返り、客観的な視点からだから言える言葉ではありますが、今を生きる我々もその歴史の中で生きていることを思い出させてくれます。
いまの日本、世界はローマに例えるとどのあたりになるのだろうか?と考えたりもします。共和制のこれから栄えていく時なのか、帝政に移行したばかりのまだ不安定でありながらも繁栄の兆しの見えるときなのか、五賢帝時代の全てがうまくいっている最盛期なのか、はたまた蛮族に侵入され滅亡の兆しが見えている時なのかー。
国というものを「常に発展していくもの」と捉えるのではなく、「いつかは滅びるもの」ととらえなおすと、国の見方や現状の見方など、大きく変わると感じます。ローマ史だけでなく、歴史の中でのいまの自分や国の立ち位置を考え直すことにもつながる、良作だと感じます。本当に、本シリーズを読んだ人とそうでない人では歴史や国家、政治、軍事と言うものに対する考え方が全く違ってくるのではないでしょうか。
さて、残すは一冊、集大成ですね。心を込めて読もうと思います。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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