2016年07月09日

読書日記600:生きるための選択 ―少女は13歳のとき、脱北することを決意して川を渡った



タイトル:生きるための選択 ―少女は13歳のとき、脱北することを決意して川を渡った
パク・ヨンミ (著), 満園 真木 (翻訳)
出版元:辰巳出版
その他:

あらすじ----------------------------------------------
北朝鮮では、死体が放置される道を学校に通い、野草や昆虫を食べて空腹を満たし、“親愛なる指導者”は心が読めて、悪いことを考えるだけで罰せられると信じて生きてきた。鴨緑江を渡って脱北した中国では、人身売買業者によって囚われの身になり、逃れてきた場所以上に野蛮で無秩序な世界を生き抜かなければならなかった―。「脱北したとき、私は“自由”という意味すら知らなかった」―およそ考えうる最悪の状況を生き延びた少女は、世界に向けて声を上げはじめた。

感想--------------------------------------------------
*記念すべき600回!

脱北という言葉は多くの人が聞いたことがあるかと思いますが、脱北者の実態について書かれた本というのは、まだまだ少ないかと思います。本書は北朝鮮から中国へ逃げ、さらに中国から韓国へと亡命した女性、パク・ヨンミの自叙伝です。北朝鮮を出たのが十三歳のとき。いまでもまだ二十三歳という若さです。

本書に描かれた北朝鮮の実態、脱北先での中国での生活には驚きを通り越して戦慄さえ覚えます。経済の崩壊により餓死する人間にあふれる北朝鮮では、当たり前のようにあちこちで人が死んでいて、死体をよけながら学校に通っていたそうです。病院でも処理できない死体が山積みにされ、草花や虫を食べる生活を送る北朝鮮の人々。そんな生活でも何よりも金一族が最優先され、ちょっとした言動ですぐに収容所に送られる生活。まさに地獄ですが、その生き方しか知らない著者にはその生活こそが普通と感じられます。

脱北先の中国では人身売買の商品として扱われ、信じては裏切られる生活を繰り返すヨンミ。極寒のゴビ砂漠を渡りモンゴルに亡命し、そこから韓国に入るヨンミは韓国でようやく自由を手に入れ、ひたすらに知識を吸収していきます。

読みながら、私は何度も巻頭にあるヨンミとその家族の写真を見返しました。「生きる」というただその一つのためにあらゆる屈辱に耐え、尊厳を捨ててきたヨンミ。生まれた国が違うだけで、ここまで悲惨な生活を送らなければならないのか、と鳥肌が立ちます。読み終えて改めて写真を見直すと、とてつもなく強い家族の写真に思えました。

本書で書かれている「自由」という言葉はことさら重く、心に響きます。まさにその「自由」を持つことを許されない国に生きていたヨンミにとって、「自由」というのは大変価値のあるものであることがよくわかります。日本のようにある程度の自由が保証されている国で口にする「自由」という言葉とは重みが違うのでしょうね。


「人を助けることで、自分の中にずっと人を思いやる気持ちがあるのだと分かった。」


韓国に移り、多くの知識を吸収し、人間らしさを取り戻していくヨンミ。その過程の中で出会う上の言葉は、本当に胸に刺さります。「生きる」という一時のためになんでもやり、他人に裏切られ、時に恐ろしい目に遭ってきたヨンミ。彼女のような人間が、世の中には多くいるのだと思うと、戦慄を覚えます。それと同時に、国家の崩壊というのは大変な犠牲を国民に強いるのだ、ということもわかります。

月並みな言葉ですが、彼女のような人間が、皆、笑顔で暮らせる日が来ることを祈らずにはいられません。ここでも紹介した「そして戦争は終わらない」や「スノーデンファイル」のような事実に基づいて書かれた本には、圧倒的な迫力がありますが、本書もその例に漏れません。北朝鮮の真実、脱北者の真実を知る絶好の書だと思います。




総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラス
posted by taka at 08:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/439856154

この記事へのトラックバック