2016年07月03日

読書日記599:ねじまき少女 下



タイトル:ねじまき少女 下
作者:パオロ・バチガルピ
出版元:早川書房
その他:

あらすじ----------------------------------------------
聖なる都市バンコクは、環境省の白シャツ隊隊長ジェイディーの失脚後、一触即発の状態にあった。カロリー企業に対する王国最後の砦“種子バンク”を管理する環境省と、カロリー企業との協調路線をとる通産省の利害は激しく対立していた。そして、新人類の都へと旅立つことを夢見るエミコが、その想いのあまり取った行動により、首都は未曾有の危機に陥っていった。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞などSF界の賞を総なめにした作品。

感想--------------------------------------------------
上巻に続いての下巻です。上下巻あわせて七百ページ程度です。さすがに様々なSF賞を総なめにした作品、誤訳がどうのと言われていましたが、個人的には気にならないほどの面白さです。

ジェイディーの失脚後、一触即発の状態に陥ったバンコク。そしてさらに遺伝子操作された新人類「ねじまき少女」であるエミコの行動により、バンコクの危機は加速するー。

裏で海外企業とつながる西洋人 アンダースン、イエローカードと呼ばれる排斥された中国人 ホク・セン、ジェイディーの後を継いだ女隊長 カニヤ、そして自由を求めるねじまき少女、エミコ。立場の異なる各人の視点が工作しながら物語は展開していくのですが、その速度はどんどんと増していきます。最後の終わり方も壮大です。詳細に創り込まれたディテールの描写と、壮大なスケールで進む物語。これぞSF、こういう世界を体験したいからこそSFを読むのだ、と感じさせます。また、日本のSFと特に違うと感じるのはそのキャラクターの描写です。エミコへの虐待の描写や、ところどころに発揮されるバイオレンス満載の描写は海外SF特有のものと感じました。

本作の特徴は、何と言ってもその独特の世界観です。エネルギーが枯渇し、メゴドント、と呼ばれる象などの力をゼンマイに蓄積する事でエネルギーを獲得し、風土病により農作物が絶滅の危機に瀕し、それを乗り切るための遺伝子改変された農作物が価値を持つ世界。バンコクのごみごみとした風景をバックに、こうした先進的な科学技術をうまく融合させているところが本当にすごいと感じます。いった事はないですが、どう読んでも舞台は熱帯直下の国、バンコクなんですよね。

排斥されたイエローバンド、滅びた周辺諸国、侵略しようとする日米欧の企業群、そしてその中で利権、自由、正義といったそれぞれの目的を持って行動する登場人物たち。最後の最後で重なり、物語を動かす各登場人物。いやあ、面白いです。日本ではそんなに評価が高くないようですが、それが不思議なくらいです。

本書は本屋の店頭ポップを手がかりに買いましたが、こういうあたりがあるから、面白いですね。また面白そうな本を探してみようと思います。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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