タイトル:マルドゥック・アノニマス 1
作者:冲方 丁
出版元:早川書房
その他:
あらすじ----------------------------------------------
『マルドゥック・スクランブル』から2年―自らの人生を取り戻したバロットは勉学の道に進み、ウフコックは新たなパートナーのロックらと事件解決の日々を送っていた。そんなイースターズ・オフィスに、馴染みの弁護士サムから企業の内部告発者ケネス・C・Oの保護依頼が持ち込まれた。調査に向かったウフコックとロックは都市の新勢力“クインテット”と遭遇する。それは悪徳と死者をめぐる最後の遍歴の始まりだった。
感想--------------------------------------------------
楽しみに待っていたマルドゥック作品の第三作目、「マルドゥック・アノニマス」。その第一巻目です。いつ出るのかと思っていましたが、ようやく出ました。あとがきに書いてありますが、「マルドゥック・スクランブル」が刊行されてから十三年が経っての刊行です。待ちに待った、という感じですね。
イースターズ・オフィスで新しいメンバーたちと事件解決に取り組むウフコックとイースター。そんな一人と一匹のもとに新しい事件が舞い込む。それは新たな激闘の始まりだったー。
十年以上の時を経ているというのに、数行を読み進めるとすぐにマルドゥック・スクランブルの世界に戻る事ができます。ドクター・イースター、金色のネズミのウフコック、そしてルーン・”バロット”・フェニックス。おなじみのメンバーとおなじみのマルドゥックシティ。そして繰り広げられる特殊な能力を持つ強化者(エンハンサー)同士の戦い。テンポの良い文章で語られる、頽廃したマルドゥック・シティで繰り広げられるバイオレンスアクションはまさに一級品のSFです。日本SF大賞を受賞した第一作目の世界を継承する世界がここに繰り広げられていること自体に感動しますし、読み進めるとどんどんと物語に引き込まれていきます。
「マルドゥック・スクランブル」がルーン・バロットの再生を、「マルドゥック・ヴェロシティ」がデムズデイル・ボイルドの生き様を描いた作品だとすると、本作「マルドゥック・アノニマス」はウフコック・ペンティーノの死に様を描いた作品との事です。しかし第一巻である本巻を読んだだけではまだその死に様にまではたどり着いていませんね。イースターズオフィスの面々と新たな敵<クインテット>という特殊な能力を持つエンハンサー同士のバトルに終始し、それはそれで十分に読み応えはあるのですが、ウフコックの死に様については断片的に顛末が語られていくだけです。
少女・バロット、タフガイ・ボイルドの二人と比較すると悩めるネズミ・ウフコックは、キャラ的にやはり少し弱い印象があり、なかなかその死に様で読者を魅了する事は難しいと思いますが、この先の展開には期待大です。個人的にはやはりバロットにウフコックを使ってほしいなあ、と思います。バロットとウフコックのコンビは、ファンとしてはやはり見てみたいですね。次巻も楽しみです。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラス
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