読書日記587:人口蒸発「5000万人国家」日本の衝撃──人口問題民間臨調 調査・報告書



タイトル:人口蒸発「5000万人国家」日本の衝撃──人口問題民間臨調 調査・報告書
一般財団法人 日本再建イニシアティブ (著)
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
危ないのは地方だけではない。
首都圏消滅も始まっている。
人口問題は日本史上最大の危機だ!

財界、官界、アカデミズムを代表する賢人が結集。
人口問題をソフトランディングさせ、
100年後も活力ある日本を維持するために
いま何をすべきかを大胆提言!

感想--------------------------------------------------
「人口蒸発」その刺激的なタイトルから読んでみました。人口減少、少子高齢化は現代日本の問題としていろいろな場面で取り上げられていますが、まとまった書籍として読むのは初めてです。

本書は日本再建イニシアティブという一般財団法人がとりまとめた報告書という形式をとっています。本書の最後に書かれていますが、有識者メンバー、ワーキングメンバーともにそうそうたる顔ぶれです。また読むと分かりますが、いろいろな業界、団体に対してヒアリングしていることもわかります。

インフラ崩壊、限界集落・マンションの増加、シルバー民主主義の台頭など様々な問題について本書では客観的な視点から調査し、そこに専門家の観点からの評価・感想を交えて書いています。従って内容は非常に濃いものであり読み応えもあるのですが、残念ながら読みやすくはありません。。。これは一つにはポンチ絵などの絵がほとんどないこと、二つには要点をまとめて書くような書き方をしていないことが原因ですね。昨今のハウツー本は過剰なまでに読みやすさを意識して書かれていますが、本書はその対極にある本と感じました。

しかしその中身は非常に示唆に富んでいます。今世紀末には日本の人口は五千万人になる、限界集落が増加し孤立死などが急増する、人口減により消滅する集落が急増する、などなど。ニュースや新聞で書かれているのでご存知の方も多いかもしれませんが、調査に基づいて書かれているため、説得力があります。また本書はその状況をもとにしっかりとした政策提言にまでまとめています。具体的な行動レベルにまで落としこめていることは評価できます。

「人口問題は長期的な問題である」

これが人口問題の解決を難しくしている大きな要因と感じました。数十年から百年単位で解決が必要なこの問題には世代を超えて対策に当たる必要がありますが、直近の選挙での票の獲得を目指す政治家や、逃げ切りを目指す既得権益層にとっては解決に努力をしてもほとんど意味のない問題です。本書には、ビジネスと紐付けることで人口問題の解決にあたっている例も幾つか紹介されていますが、やはり政策・制度といった「仕組み」で攻めないと難しいと感じます。このあたり日本独特のボトムアップの政治体制の難しさとも感じます。政策が後手後手になるのは仕方ないとして、その遅れを取り戻すためにどうするのか、どのように素早くコンセンサスを取り政策を立案する仕組みを作るのか、その辺りが鍵になるかと感じます。

正直言って、本書に書かれているような数十年後の未来の絵はそのまま現実になる気がします。人口が増えず、子供を生み育てられない最大の理由は、「国民が未来に希望をもてない」ということですね。高度成長期のように国がより良くなっていく未来を誰もが想像できるのであれば、人は増えていくのでしょうが、今はその逆になってしまっています。こうした現実を見ると、日本という国の人口は着実に減っていくだろうし、シビアな話になりますが人口減の行き着く先、日本という国の着地点を見極めておく必要もあるのかな、と感じました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック