タイトル:世界への扉を開く“考える人”の育て方-国際バカロレア(IB)教育が与えるインパクト
作者:大前研一
出版元:ビジネス・ブレークスルー
その他:
あらすじ----------------------------------------------
皆さんは、既に4半世紀前にかかろうとする、今から23年前に語られた大前研一のメッセージをどのように受け止められるでしょうか?
この書籍の元になっている月刊情報誌:大前研一通信では、グローバルな視点で、日本のみならず、世界の政治・経済などの様々な問題を洞察、分析したメッセージを紹介してきました。
感想--------------------------------------------------
レビュープラス様から献本いただきました。いつもありがとうございます。本書、「”考える人”の育て方」は大前研一通信の特別保存版PartIXとして刊行された書籍で、様々な場での大前研一氏の発言をまとめたものです。今回は電子書籍として献本いただきました。
これまでも大前研一通信についてはこのブログで何度も取り上げていますが、今回の「”考える人”の育て方」の特徴は、”考える人”というタイトルそのままに、教育というものについて多く取り上げている点です。またかなり昔、一九八〇年代や九〇年代の大前研一氏の発言についても多く取り上げられていますね。
大前研一氏が一貫して言われているのは、「自分の頭で考えることの出来る人を育てることが非常に重要」ということです。現在の知識詰め込み型の教育では今後の答えのない問題が多く出てくる社会で生きていく人材を育てることは難しく、もっと”考える”ということに重点を置くことが重要だ、と述べられています。この考えには共感できます。
さらにイーロン・マスクのようなシリコンバレーで活躍している実業家を例に挙げ、「枠にとらわれない、これまでの常識や価値観を壊すような人物を育てることが必要」と述べ、日本はイーロン・マスクやジェフ・ベソスのような傑出した一人の才能に負ける、とも述べられています。また本書の後半は国際バカロレアに関する記事となり、その中ではインタビューを受けた方々が全人各教育の重要性についても述べられていますね。
いつも思うのですが、スティーブ・ジョブスのような傑出した才能を持つ人は、人格的に?と思わされる人が多いのも事実かと思います。自分の思いや理想を最優先し、それを実現するためには他の全てを犠牲にする(本人は犠牲にしていることさえ気付かない)人だからこそ、莫大な成功を収めることが出来るのでしょうね。しかしそう思う一方で、親や社会の眼線としては、莫大な成功など収めなくてもいいから、まともな人間に育って欲しい、と思うのも事実です。社会や家庭で求められる人物像から、成功者というのは大きく離れてしまっているのでしょうね。
このあたりが難しいところかと感じます。日本では、戦後すぐのように「なりふり構っていられず、生きていくことが全て」という時代では上に書いた成功者のような人物像が社会的にも容認されていたのでしょうが、今のようなスマートな時代では、成功する前に「壊れた人間」として排除される可能性が非常に強いと感じています。つまり、今の日本からは大前研一氏が言うような「ストリートスマートな人間」が生まれにくくなっているのでしょうね。簡単なのは海外に出ることでしょうが、そうするとなかなか日本という国の利益には結びつきにくい気もします。
つくづく思いますし、本書にも少しかかれていますが、日本のような横並びが賞賛され、異端を許さないような社会の中ではなかなか上記のような成功者はでにくいと思います。ここは日本流の「成功者」を作り出す仕組みを独自に作ることが必要なのでしょうね。日本にも「成功者」と呼ばれる人は多くいますので、彼らのスタイルを研究することも重要と感じました。
本書はいつもいろいろなことを考えさせてくれて、私にとっては非常に役立つ本だと感じています。また次の号も楽しみです。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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