読書日記584:ローマ人の物語〈38〉キリストの勝利〈上〉



タイトル:ローマ人の物語〈38〉キリストの勝利〈上〉
作者:塩野 七生
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
紀元337年、大帝コンスタンティヌスがついに没する。死後は帝国を五分し、三人の息子と二人の甥に分割統治させると公表していた。だがすぐさま甥たちが粛清され、息子たちも内戦に突入する。最後に一人残り、大帝のキリスト教振興の遺志を引き継いだのは、次男コンスタンティウス。そして副帝として登場したのが、後に背教者と呼ばれる、ユリアヌスであった。

感想--------------------------------------------------
ローマ人の物語の38巻です。最終巻まであと五冊とカウントダウンに入りました。長かったローマ帝国の歴史も幕を下ろそうとしています。

本巻では「大帝」と呼ばれキリスト教の振興に大きな役割を果たしたコンスタンティヌス帝の後を継いだコンスタンティウス帝の治世について語られます。四人の皇帝が分割統治する時代を経てライバルを次々と葬り、トップに上り詰めたコンスタンティヌスは子供や甥による分割統治を遺言として残しますが、粛正と衝突によりコンスタンティウス以外は全員、殺されてしまいます。殺戮により全ての片がついていくこの辺りは時代を感じさせますね。

そして、内戦と蛮族の侵入により弱体化したガリアを再興するべくユリアヌスが副帝として起ちます。このユリアヌスの本格治世が描かれるのは39巻ですが、本巻を読むだけでもこのユリアヌスの生涯は波乱に満ちている事が推し量れます。血の粛清を生き残り、幼少時は幽閉され、かろうじて生き延びてわずかな手勢とともに送り込まれたガリアの地で目覚ましい活躍を遂げるユリアヌス。後世、小説などの題材で表されるのも納得できます。

この時代になるとキリスト教が大きな地位を占め始めますが、この理由には世の中が非常に荒んでいた事も理由としてあげられるのではないかと思います。ままならない世では、頼るもの、救いの手を差し伸べてくれるものを求めるのが人の心情であり、頼る先が宗教に向かうのは自然の流れだと感じます。

コンスタンティウスがペルシャを撃退しようと、ユリアヌスがガリア再興を成し遂げようと、ローマを覆うくらい影は払拭できてきません。坂を転がり落ちるように衰退していくローマ帝国ですが、一度このようになってしまうと、もう復興はできないものなのでしょうか??かつての栄光の影さえないローマの姿を読んでいると、現在の様々な国に当てはめ、いまこの国はどの一にいるのだろうか、とか考えてしまいます。

残るは滅び行くだけのローマ帝国ですが、あと五冊じっくりと読みたいと思います。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック