読書日記579:いちご同盟



タイトル:いちご同盟
作者:三田 誠広
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
中学三年生の良一は、同級生の野球部のエース・徹也を通じて、重症の腫瘍で入院中の少女・直美を知る。徹也は対抗試合に全力を尽くして直美を力づけ、良一もよい話し相手になって彼女を慰める。ある日、直美が突然良一に言った。「あたしと、心中しない?」ガラス細工のように繊細な少年の日の恋愛と友情、生と死をリリカルに描いた長篇。

感想--------------------------------------------------
三田誠広さんの作品です。今から二十年以上前の作品ですが、心に残る作品だと感じました。著者は「僕って何」で芥川賞を受賞されています。

高校進学にそして生き方に悩む良一は、ある日野球部のエース徹也に誘われて病院に行く。そこで出会ったのは入院している同い年の直美という少女だったー。

 鮮烈な作品です。その鮮烈さは二十年を経ていても色あせてはいません。確かに今の小説と比べると作りも、描かれている時代も古さを感じさせますが、そのメッセージ、終わり方には、今の小説にはない素直さ、ストレートさを感じます。
本作のタイトル「いちご同盟」ですが、”いちご”とは果物の苺のことではなく、一五、つまり十五歳の同盟という意 味です。青春の真っただ中である十五歳という年齢、その刹那を切り取って結んだ「いちご同盟」。青春という一瞬の時期を切り取った名タイトルだと思います。

 生きることに迷う良一、今という刹那に生き、そのことを自覚して過去を忘れることを恐れる徹也、余命いくばくもない直美。将来と生きることに悩む三人の姿を著者は静かにそして淡々と描いていきます。背景にあるのは良一が打ち込むピアノの調べ。これが物語にさらなる静けさと、余計なものを省いた潔さ、簡潔さをもたらしています。

 容赦なく進む時、そして訪れる結末。特に心に残るのは直美の鮮烈さです。今を生きる自分の痕跡を残そうとし、自分の感情を必死に表そうとする直美。彼女の鮮烈な生き様が良一をそして徹 也を揺り動かしていきます。終わり方も潔く、読者の心に余韻を残します。

この作品は確かに名作です。時を経て、将来に伝えられるべき本でしょうね。静かにそして熱いものを読者の心に残す本だと思いました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス

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