タイトル:ローマ人の物語〈34〉迷走する帝国〈下〉
作者:塩野 七生
出版元:新潮社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
疫病の流行や自然災害の続発、そして蛮族の侵入といった危機的状況が続く中、騎兵団長出身のアウレリアヌスが帝位に就く。内政改革を断行するとともに、安全保障面でも果断な指導力を発揮し、パルミラとガリアの独立で三分されていた帝国領土の再復に成功。しかし、そのアウレリアヌスも些細なことから部下に謀殺され、ローマは再び混沌のなかに沈み込んでいく。のちに帝国を侵食するキリスト教も、静かに勢力を伸ばしつつあった。
感想--------------------------------------------------
「ローマ人の物語」の34巻です。<迷走する帝国>の下巻ということで「三世紀の危機」と呼ばれる蛮族の侵入や帝国三分の危機が描かれています。崩壊一歩手前まで追い込まれている、という印象ですね。
ガリア帝国、パルミラ王国とローマ帝国内に二つの国ができてしまった危機を乗り越えられたのは、皇帝アウレリアヌスのおかげですが、彼もまた謀殺されてしまいます。この時代は本当に皇帝一人の治世の期間が短く、しかもほとんど全員が殺されていくため、皇帝になるのも命がけだったのでは、と思います。
またこの巻では特にローマの「非ローマ化」が進んでいく様がよくわかります。重装歩兵から騎兵を中心に軍を組み替え、攻めるよりも攻め込まれた際の対応を重視するようになってきたあたり、ローマの国力がだいぶ落ちていることがわかります。
迷走する帝国は次第に国力を衰えさせながら、大帝コンスタンティヌスの時代へと近付いていきます。次巻も楽しみです。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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