コミック日記144:イエスタデイをうたって 11



タイトル:イエスタデイをうたって 11
作者:冬目 景
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
誰にも行先を告げずにいなくなり、未だ戻らない晴の存在が大きくなる陸生。シナ子も浪がイタリアに行くことを知り、心は揺れる…。遠回りして辿り着いたそれぞれの選択とは…。長きに渡る若者達の恋ここに、完結──。

感想--------------------------------------------------
刊行からしばらく間が空いてしまいましたがーこの本については書かなきゃなあ、と思って、ようやく書けました。第一巻の刊行から十八年ですか。十八年で十一冊。一年に一冊も出ていないのに、ここまで連載が続いて連載終了がニュースにもなるというのは、やはりこの作品が愛されていたからこそだと思います。私もこの作品は大好きでした。とうとうの、最終巻です。

ぎくしゃくしながらも付き合い出したリクオとシナ子。行方をくらましたハル。イタリアへいくことを決意した浪。四人+αの恋の行方に一つの区切りがつくー。

個人的にはなるほどなあ、やっぱりこうなるんだろうなあ、という終わり方でした。賛否両論あるのでしょうが、個人的にはきれいに始まって、きれいに終わった物語だな、と感じます。じれったくってめんどくさい人ばかりでしたが、誰の根底にも悪意がないことがよくわかるので、物語自体はとても愛せました。特にシナ子が面倒くさい、、、実際にいたら周囲は大変だろうなあ、って思わせる人でした。男性陣も人畜無害な人ばかりで、それがまた物語的にはよかったです。私が個人的に好きだったのはリクオとハルの掛け合いですね。これはどの巻でも楽しかったです。

最初にこの物語に私が出会ったのが十六年前で、その時と比べると、だいぶ物語への印象が変わった気がします。物語自体は(驚くべき事に)十八年経っているのに一巻からあまり変わった気がしないので、捉える方である私の心が変わったのでしょうね。独身で働き始めたばかりの頃に読んだ印象と、家族のいる現在では恋愛に対する考え方も大きく変わっていて、それが物語の捉え方に大きな影響が出ているのだと感じます。一巻や二巻を読んだ若かりし時はリクオへのハルの一途な思いや、シナ子先生へのリクオの恋心がとても眩しく、くすぐったくも感じられたのですが、いまとなっては、、、という感じですね。生まれた子が大学に入学するくらいの期間、連載していたのですから読み手の捉え方が変わるのも当然と言えば当然ですが。

この物語は確かにじれったいのですが、一方でほのぼのとしている部分もあり、恋愛に真剣なんだけれどそこまで焦っていないあたりが自分的には好きでした。好きだったのは破壊王:柚原や湊くん、滝下くんなんかですね。あとシナ子先生は髪長い時期の方が、好きでした。

「愛とはなんぞや?」

一巻でのハルの問いですが、本作はこれに答えを出す物語だったのかな、と思います。そう言う意味では、ラストはちゃんと答えている(?)ように感じられました。

しかし、本当に十八年間お疲れ様でした。毎巻毎巻、出るのが本当に楽しみで、一年に一回もでないので、本屋に並んでいるのを見つけると、レアものを見つけたような気分で幸せになれた本でした。「羊のうた」などの名作が多い作者さんなので、次回作も期待しています!

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S(シリーズ通じて)
レビュープラス

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