読書日記563:ソロモンの偽証: 第III部 法廷 上巻



タイトル:ソロモンの偽証: 第III部 法廷 上巻
作者:宮部 みゆき
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
空想です―。弁護人・神原和彦は高らかに宣言する。大出俊次が柏木卓也を殺害した根拠は何もない、と。城東第三中学校は“問題児”というレッテルから空想を作り出し、彼をスケープゴートにしたのだ、と。対する検事・藤野涼子は事件の目撃者にして告発状の差出人、三宅樹理を証人出廷させる。あの日、クリスマスイヴの夜、屋上で何があったのか。白熱の裁判は、事件の核心に触れる。

感想--------------------------------------------------
「ソロモンの偽証」文庫版全六巻の第五巻です。本巻も五百六十ページ程度と、非常に分厚いですが、一気に読んでしまいました。このリーダビリティの良さはなんなんでしょうね。。。

遂に開廷した学校内裁判。柏木卓也の死の真相に迫るため、検事側、弁護側共に譲らず舌戦を繰り広げる。柏木卓也の死の真相はどこにあるのかー。

第一部が事件を客観的に伝え、第二部が当事者である生徒たちの目線から事件をとらえていたのに対し、第三部では様々な登場人物の視点からこの法廷を描いています。それは刑事の佐々木であったり、廷吏のヤマシンであったりするのですが、本巻ではそのように様々な人の目から法廷を描く事で、城東三中で起きた事件と、その関係者の素顔を浮き彫りにしていきます。大人の視点と中学生の視点を混ぜる事で、各人がどのように感じたのか、どのような意図があったのか、などが明らかにしていくこの描き方はさすがです。

一文一文は簡潔で読みやすいのに、その積み重ねで複雑な人間心理や事件を巧みに作り上げていく。このような描き方は東野圭吾さんにも通じるものがあると思います。東野圭吾さんは簡潔な文で切れ味よく、一方で宮部みゆきさんは簡潔な文をいくつも積み重ねて重厚に、といった具合でしょうか。読みやすい文章というのは、売れっ子作家さんの共通点なのでしょうね。

本巻では学校内裁判の様子が描かれていますが、これまでの巻で語られてきた内容を改めて様々な証人の口から喋らせているので、既に二部まで読んでいる読者にとってのサプライズは多くはありません。しかし証人の描写や陪審員の心情の揺れなどを読んでいると、決して飽きる事はありません。そして本巻の最後に、それまで明かされていなかった真実が明かされていきます。このあたりのストーリーの組み立て方は絶妙です。下巻への期待が嫌が応にも高まりますね。

いくつも謎がまだ残されていますが、ここまで読んできてやはり一番怪しいと感じるのは、天才的な切れを見せる「あの人」ですね。詳細は避けますが、ここまで読んでくるとさすがに読者も気付いてくるはずです。

あと一冊で本作品も終わりです。三千ページを超える作品なのに、それを感じさせません。最後まで一気に読み切ろうかと思います。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス

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