タイトル:ローマ人の物語〈33〉迷走する帝国〈中〉
作者:塩野七生
出版元:新潮社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
カラカラ帝が東方遠征の最前線で、警護隊長の手によって殺害されるという事件が起こって以降、兵士たちによる皇帝謀殺が相次ぎ、元老院に議席を持たない将官出身の「軍人皇帝」が次々に現れては消える、危機の時代が続く。かくしてローマは政略面での継続性を失い、ついにはペルシアとの戦いの先頭に立っていた皇帝ヴァレリアヌスが敵国に捕縛されるという、前代未聞の不祥事がローマを襲う。帝国の衰亡はもはや誰の眼にも明らかだった。
感想--------------------------------------------------
ローマ人の物語の第三十三巻です。「迷走する帝国」の中ということで、いよいよローマ帝国の衰退が加速していきます。
内輪もめで次々と皇帝が即位しては殺され、国力が弱っていくのが本巻です。紀元三世紀の危機と呼ばれる時期ですね。北方からは蛮族が侵攻し、東方からはパルティアに代わったササン朝ペルシャが侵攻し、国内では疫病が流行り、とまさに泣き面に蜂状態です。
もうここまでくると、皇帝の名前も覚えきれなくなりますね。戦闘で殺される皇帝、戦闘で捕虜として捕まる皇帝など、これまでにはなかった状況が勃発していきます。このあたり、ローマ皇帝という存在自体がこれまでの存在と大きく変わってきていると感じます。
平和は最上の価値だが、それに慣れすぎると平和を失うことになりかねない。
本巻の一文です。パクス・ロマーナ時代のローマは平和ではありつつも、外敵に対する防御をしっかりと行なっていましたが、この時代のローマは外部に対して弱腰の外交対応が多くなり、それが危機を招いてきているようです。平和とはただで手に入るものではない、という認識が徐々に薄れ、さらに内戦などが重なってこのような事態になってきたのでしょうね。非常に深い文だと思います。
崩壊の一歩手前まで進んだローマ帝国。ここからどのように建て直しを図っていくのか、次巻も楽しみに読んでみたいと思います。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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