読書日記558:ソロモンの偽証: 第II部 決意 上巻



タイトル:ソロモンの偽証: 第II部 決意 上巻
作者:宮部 みゆき
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
二人の同級生の死。マスコミによる偏向報道。当事者の生徒達を差し置いて、ただ事態の収束だけを目指す大人。結局、クラスメイトはなぜ死んだのか。なにもわからないままでは、あたし達は前に進めない。だったら、自分達で真相をつかもう―。そんな藤野涼子の思いが、周囲に仲間を生み出し、中学三年有志による「学校内裁判」開廷が決まる。求めるはただ一つ、柏木卓也の死の真実。

感想--------------------------------------------------
宮部みゆきさんの「ソロモンの偽証」の文庫版全六巻、その第三巻です。「決意」の章の第一部という位置付けになりますね。

同級生、柏木卓也の死を巡るごたごたに巻き込まれた城東三中。その中で、さらにもう一人の同級生、浅井松子も死に至る。藤野涼子は意を決し、学校内裁判を提案する―。

一巻、二巻が事件の発生とその推移、そしてその事件を巡る生徒、親、教師、警察、テレビ局などの思いの交錯とすれ違いを描いていたのに対し、本巻からは完全に視点が生徒に切り替わります。学校内裁判を提案した藤野涼子、犯人かもしれないと疑われる大出俊次、裁判で弁護士を務めることになった神原和彦と彼の補佐を勤める野中健一。主にこの四人を中心に事件の関係者との会話に費やされていきます。

物語の進み方もぐっとスローダウンしています。一巻、二巻が事件が発生したクリスマスイブから夏休み前までを描いていたのに対し、本巻では夏休み前から夏休みはじめ前までのほんの数日間を描いているに過ぎません。描かれている期間が短くなっている分、その密度はどんどんと増してきています。

もう一つ特徴的なのは描かれている生徒の表情や動作の描写の細やかさです。事件を描いていた一、二巻に対し、三巻では明確に対象が生徒に切り替わっていますね。もともとが細かい描写表現の得意な作家さんですので、その描き方には感嘆させられます。特にうまいのが弁護士の補佐を勤める野中健一の内面と仕草の描写です。いろいろな生徒が登場しますが、この作品の中で最も感情移入できたのは野中健一です。優等生であり強くもあり美人でもある藤野涼子や、不良の大出俊次、飄々とした神原和彦と違い、野中健一はどこか鬱屈した内向的な性格をしており、このあたりが最も読者に親近感を覚え易いキャラクターなのだと思います。

そして物語は少しずつ、終盤へと向けていろいろな展開がでてきます。そしてそこに読者は期待せずにはいられないんですね。「はたして柏木卓也の死は、本当に自殺なのか?」と。まだまだ本作を読んでいる限りは自殺の線が濃厚です。しかし、本当に自殺なのか?どんでん返しがあるのではないか?という期待は感じさせます。当然ですね。著者があの宮部みゆきなのですから。

ここまでで既に千五百ページは読んでいるのですが、まだ半分です。文庫版にしてトータル三千ページを超える大作を読み終えたとき、そこには何が見えるのか?期待して続きを読んで行きたいと思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス

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