読書日記547:キノの旅 The beautiful world



タイトル:キノの旅 The beautiful world

作者:時雨沢恵一 (著), 黒星紅白 (イラスト)
出版元:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
その他:

あらすじ----------------------------------------------


感想--------------------------------------------------
私はあまりライトノベル(通称 ラノベ)を読む方ではありません。今の世の中、ラノベが大盛況で、多くの人が読んでいますし、アニメ化などもされていますが、私にはどれもが画一的で、似たり寄ったりの展開に見えてしまうんですね。主人公の男子がその他大勢の女子と、恋愛し、バトルし。。。といった感じで、確かに名作もあるのでしょうし、読まず嫌い的な側面もあるかもしれませんが、あまり読む気には慣れていないのが現状です。

そんな私でも、「このラノベは読んでみたい」と思っていたのが本作「キノの旅」です。一般的なラノベとは異なった独特な展開、そして寓話的にさえ思えるストーリーに、一度は読んでみたいと思っていましたが、手に取る機会に巡り合いました。ちなみに本作はシリーズ化されており二十冊近く本が出ています。またラノベとしての評価も非常に高い本でありながら、「中学100選」の本にも選ばれているような本です。

本作は、主人公である拳銃(物語中ではパースエイダーと呼ばれている)の名手キノと、彼の乗る喋るバイク(物語中ではモトラドと呼ばれている)が様々な国を旅する物語を描いた短編集です。どの国にも共通しているのは壁に囲まれていることくらいで、各章の名前は「平和な国」や「大人の国」、「多数決の国」という形に二人が旅した国の名前そのままとなっています。
各国は、もちろんそのままタイトルのような国であるわけではなく、「他者を蹂躙することで成り立っている平和な国」や、「最後の一人がいなくなるまで多数決を繰り返した国」など寓話的な国が多く、そこには「本当の平和とは?」とか「多数決って?」などといったことを考えさせる寓意が含まれています。そしてこの部分の見せ方が非常に上手いです。

寓話部分ともう一つの本作の魅力は、やはり主人公であるキノとエルメスのキャラクターと、その二人の各国の人たちとの関わり合い方です。どこかおかしな各国の人々を、キノとエルメスは極めて中立的な立場から、時には冷たいと感じさせるほどの冷静さで見つめます。そして各国の人たちに放つ言葉や弾丸は、そのまま読み手にも向けられます。「いまの世界の常識って、本当にそれでいいの?」と。

この本は単なるラノベに収まりませんね。萌え系の女子が出てくるわけでもなし、世界をかけた壮大な戦いが繰り広げられるわけでもありません。淡々と旅するキノたちの姿が描かれるだけですが、それでもこの物語は深く、読み手の心に残ります。本嫌いの人が読書を始めるきっかけになるような本だと感じました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス

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