2015年05月04日

読書日記538:黒い季節 by冲方 丁



タイトル:黒い季節
作者:冲方 丁
出版元:角川書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
身のうちに病を飼い、未来を望まぬヤクザ「藤堂」、記憶を喪い、未来の鍵となる美少年「穂」、未来を手にせんとする男「沖」、沖と宿命で結ばれた異能の女「蛭雪」、未来を望まずにはいられぬ少年「誠」、誠と偶然で結ばれた異能の女「戊」―縁は結ばれ、賽は投げられた。世界は、未来は変わるのか?本屋大賞作家、冲方丁が若き日の情熱と才能をフル投入した、いまだかつてない異形のエンタテインメント。

感想--------------------------------------------------
冲方丁さんの作品です。一九九六年に刊行された本作は、第一回スニーカー大賞の金賞受賞作であり、著者のデビュー作でもあります。「ばいばい、アース」や「マルドゥック・スクランブル」などSF・ファンタジーの名作を生み出してきた著者のルーツとも言える作品かと思います。

ヤクザの藤堂と拾った記憶喪失の少年 穂(すい)、同じくヤクザの沖と異能の女 蛭雪、そして数奇な運命の下に生まれた少年誠と、異能の女「戌(ほこ)」。三組が入り混じり、異能の者同士の「祭り」が繰り広げられる―!!

典型的な、異能の者同士のバトルファンタジーです。昔で言うと、荒俣宏さんの「帝都物語」をもっとライトに、ファンタジックにした感じでしょうか。血飛沫が舞い、妖術めいた術が飛び交い、とエンターテイメント要素満載です。文章表現の美しさ、読む者を引き込む文章力の確かさ、などは当時も今も変わりません。さすが金賞受賞作、圧倒的なエンターテイメントとして読者を引き込んで放しません。

三組の登場人物の係わり合いも読む者を引き込みます。穂の面影に分かれたかつての妻を思い出す藤堂、お互いに運命的に惹かれあう誠と戌、妖しくも惹かれあう沖と蛭雪。最も印象的なのは私的には誠と戌でしたが、どの組合せもそこに確かな感情がしっかりと描かれています。

しかし、「マルドゥック・スクランブル」や「ばいばい、アース」と比べると少し見劣りしてしまう部分があるのも否めません。それは本作が四百ページ足らずの作品であるのに、主要な登場人物が上に書いた三組もあるからでしょうね。無駄をそぎ落とした読みやすい文章とは言え、やはりこれだけの内容を書くのにこのページ数は少なく感じられます。また「マルドゥック・スクランブル」のバロットや、「ばいばい、アース」のベルのように核となる主人公がいないこともその理由かと思います。「主人公の成長を描く」という側面がこの二作では強かったですが、本作ではバトルファンタジーに終始しているように感じられます。

個人的にはバーの主人、鹿島と店員のさやがいい味を出していると感じました。いろいろと書きましたが、和風テイストのエンターテイメントとしては非常に完成度の高い作品ですし、なにより冲方丁ファンは必読ですね。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
posted by taka at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 冲方 丁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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