読書日記532:マスカレード・ホテル by東野圭吾



タイトル:マスカレード・ホテル
作者:東野圭吾
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
都内で起きた不可解な連続殺人事件。容疑者もターゲットも不明。残された暗号から判明したのは、次の犯行場所が一流ホテル・コルテシア東京ということのみ。若き刑事・新田浩介は、ホテルマンに化けて潜入捜査に就くことを命じられる。彼を教育するのは、女性フロントクラークの山岸尚美。次から次へと怪しげな客たちが訪れる中、二人は真相に辿り着けるのか!?いま幕が開く傑作新シリーズ。

感想--------------------------------------------------
東野圭吾さんの作品です。もはや鉄板の作家さんですが、なかでもこの「マスカレードホテル」は読んでみたいと思っていた作品でした。

犯人も被害者も不明のまま、殺人事件の現場になると予測されたホテル・コルテシア東京。フロントデスク係として潜入操作を命じられた新田の教育担当となったのは、山岸尚美という女性だった―。

全四百ページ以上と分厚い作品ですが、その厚さを感じさせずに一気読みさせてしまうところがさすが東野作品です。しかしもうこの程度ではこの作家の作品は驚きませんね。本書の見所はまさにそのタイトルともなっている通り、舞台が「ホテル」であるところです。そして本作を読むと著者がこの「ホテル」についてすごく勉強していたことがわかります。

本作の舞台となるホテル・コルテシア東京は超一流のホテルですが、ホテルに泊まりに来る人間には実に多種多様な人間がいて、泊まりに来る目的も様々であることがよくわかります。また客も模範的な客ばかりでなく、横柄な客、我が儘を言う客、不思議なことを言い出す客もおり、客である以上、その全てに対応しなくてはなりません。一流のホテルマンというのがどれだけたいへんか読むと良く分かります。

物語はホテルマンである山岸と潜入捜査員である新田を中心に進んでいきます。物語は犯罪捜査がメインですが、上に書いたようにホテルに宿泊に来る不思議な客についても書かれています。そしてこれが凄いところなのですが、一読した限りでは全く無関係に見えるこの宿泊客の話が、見事に犯罪捜査―殺人事件の被疑者の捜査の話と結びついてきます。この物語の構成のうまさは、さすが東野圭吾、と唸らされます。「新参者」でも幾つもの短編が少しずつ軸となる殺人事件と絡んでいて、その構成のみごとさにうならされましたが、あの作品と同じように驚かされました。

物語はいつもの東野作品のように、簡潔明瞭な文章でどちらかというと淡々と進んでいきます。しかし物語りはラストに向けて次第に加速し、最後は満足すべき終わり方を見せます。やはりすごいですね、東野圭吾。

なんの奇のてらいもない、純粋なミステリですが、それをこれだけの高い質で読み手を満足させるように書けるのはさすがです。・・・ちなみにタイトルの「マスカレード」というのは本書の中に出てくる文に由来しています。「お客様は皆、客という仮面をかぶっている」。なるほど、と思わされます。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス

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