コミック日記141:乙嫁語り 7巻
タイトル:乙嫁語り 7巻
作者:森薫
出版元:KADOKAWA/エンターブレイン
その他:
あらすじ----------------------------------------------
旅を続ける英国人スミスと案内人アリ。アラル海にある双子の村から山を越えて南下し、
たどり着いた場所はペルシア。
逗留先の主人から歓迎を受けるふたりであったが、そのウラでは第4の乙嫁アニスが、
誰にも打ち明けられない悩みを抱えていた……!
感想--------------------------------------------------
マンガ大賞も受賞した乙嫁語りの最新巻です。本巻からは新しい乙嫁、アニスが登場します。
大富豪の妻として寵愛を受け、何不自由なく暮らすアニス。しかし彼女の心はどこか満たされていなかった。そんな時、彼女は浴場でシーリーンという女性と出会う—。
前巻の乱戦とは違い、不穏な動きのない落ち着いたストーリーが展開します。何不自由なく暮らしながら心の中にどこか寂しさを抱え、満ち足りないものを感じるアニスと、そんなときに出会ったシーリーン。どこか対照的な二人はやがて姉妹妻となっていきます。
本巻はこれまでの巻と違い、描写の美しさが際立っていたり、物語の展開がどきどきするものだったり、というわけではなく、静かな物語が展開されていきます。一段落、といった巻でしょうか。
あとがきを読むとわかるのですが、本巻のキーワードでもある「姉妹妻」という女性同士が結婚する制度は当時、実際にあった制度で、一緒に住むことはもちろん、死後は財産分与を行なったりと、女性同士であること以外は本当の結婚と同じ制度のようです。こうした制度があること自体、もちろん知りもしませんでした。こうした制度のところまでしっかりと調べて描かれている点はやはりプロの漫画家と感じます。
本巻はもちろん、他の巻を読んでいても感じるのですが、「結婚」という制度はその土地の、その時期の風習によって大きく異なるものです。一夫多妻制だったり、娘の結婚を親が決めたり、女性同士の結婚があったりと、当時のこの地域の「結婚」という風習は日本のそれとは大きく異なるものだと感じます。
このように風習に大きく左右される「結婚」というものを主題として取り上げることで、著者は本シリーズを通じて当時の文化・風習を描きたかったのだろうな、と強く感じました。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
この記事へのコメント