読書日記523:ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~



タイトル:ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~
作者:三上 延
出版元:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
その他:

あらすじ----------------------------------------------
太宰治の『晩年』を奪うため、美しき女店主に危害を加えた青年。ビブリア古書堂の二人の前に、彼が再び現れる。今度は依頼者として。違う『晩年』を捜しているという奇妙な依頼。署名ではないのに、太宰自筆と分かる珍しい書きこみがあるらしい。本を追ううちに、二人は驚くべき事実に辿り着く。四十七年前にあった太宰の稀覯本を巡る盗難事件。それには二人の祖父母が関わっていた。過去を再現するかのような奇妙な巡り合わせ。深い謎の先に待つのは偶然か必然か?

感想--------------------------------------------------
古書のことになると素晴らしいさえを見せる美人店主、栞子さんと店員の五浦君が活躍する大人気シリーズ、「ビブリア古書堂の事件手帖」の第六巻です。

栞子さんを階段から突き落とし、太宰の著書『晩年』の古書を奪おうとした田中敏雄。出所したその男が、再び五浦の前に現れる—。

相変わらずこのシリーズは面白いです。本巻は第一巻で少しだけ取り上げた太宰治を、まるまる一巻使って再び扱っています。『走れメロス』、『駆込み訴へ』、『晩年』と、各章のタイトルも太宰の名著のタイトルそのままになっています。

本巻は、個人的にはこれまでのどの巻よりも面白く読めました。付き合い出した栞子さんと五浦くんの恋愛、太宰治の『晩年』を巡るミステリー、そして古書を巡る様々な人々の人間模様がうまく調和していて、それが静かで抑えた表現の中でゆっくりと進んでいきます。ラノベの作者とのことですが、若者以外の様々な人でも十二分に読めるつくりになっています。シリーズものの利点ともいえる、各キャラクターの個性がしっかり確立されている点や、これまでの展開をうまく利用した物語展開などもいいですね。

本書を読んでよくわかるのは、本巻が非常に丁寧に作られている、ということです。様々な要素が含まれていて、張られた伏線や、終わりの見所での盛り上がりもいいのですが、全体的なトーンは損なわれず、栞子さんと五浦くんの関係をベースとした静かな展開で物語が進んでいきます。太宰の著作に対する調査の内容も凄いのですが、あとがきに書かれていた「少しずつ書き進んでいった」という、この丁寧な書き方がまずなにより凄いと感じました。

シリーズものだとシリーズ開始当初と後半では性格が変わってきたりすることもあるのですが、本作ではそれもほとんど感じません。このあたりにもつくりの丁寧さを感じますね。

あとがきに書かれていましたが、本シリーズはあと一巻か二巻で終わりだそうです。ファンとしては少し残念ですが、シリーズものは終わらせ方が非常に重要でもあり難しいとも感じます。あと一巻、できれば二巻、ぜひ楽しみに読んでみたいと思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラス

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