読書日記512:ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える
タイトル:ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える
作者:ビクター・マイヤー=ショーンベルガー (著), ケネス・クキエ (著), 斎藤 栄一郎 (翻訳)
出版元:講談社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
統計学が最強になる時代、我々の未来の生活、仕事、意識、すべてが「ビッグデータ」によって大きく変わる。2013年最大のキーワードを初めて本格的に論じたベストセラー、待望の翻訳。企業はいかに新たな価値を生み出すことができるのか、人々は物事の認知のあり方をどのように変える必要があるのかー大胆な主張と見事な語り口でその答えを示している。
感想--------------------------------------------------
ビッグデータという言葉はいまやあちこちで聞くようになりましたが、個人的にまだその内容がよくわかっておらず、Amazonでも評価の高かったこの本を読んでみました。著者はオックスフォードインターネット研究所の教授であり、インターネットの規制とガバナンスを専門とされている方です。従って「規制」に関する側面からの指摘も多く、内容に厚みを感じました。
ビッグデータという言葉は、単純に「莫大な量のデータ」を示す言葉です。ハードの進歩によりかつては考えられなかった数億以上のデータを蓄積し分析することで様々な事柄の予測が可能となってきました。しかしビッグデータの本質はその規模だけではありません。本書の最初で言われているビッグデータによりもたらされる大きな変化は以下の三つです。
「ビッグデータは限りなくすべてのデータを扱う」
「量さえあれば精度は重要ではない」
「因果関係、すなわち「原因と結果」を求める古い体質からの脱却」
標本抽出や、詳細精度への拘り、原因といったものの価値が薄れる一方で、膨大なデータに基づいた統計分析により導き出される傾向と発生確率が世の中を支配する。それがビッグデータが発展することで起こり得ることなのだ、と言っているわけですね。
実際にグーグルやAmazonといった先進的なIT企業はもちろんのこと、多くの企業がこの流れに乗りつつあり、情報を持つ企業、分析スキルを持つ企業、アイデアを出す企業、と区分けも明確になりつつあるようです。グーグルの翻訳機能は数億以上のデータから導きだした相関関係から作り上げているそうで、相関関係分析というのは原理の抽出よりも実際には大きな役に立つことも多いのだということが実感として理解できます。
また本書の大きな特徴は、そのビッグデータの危険性についてもきちんと触れ、ビッグデータを扱う上でどのような法律が整備され、どのように扱うことでプライバシーの侵害といったリスクを回避することが出来るか、についてきちんと触れている点です。著者がこの方面の専門であることからこうした方面に触れているのかと思いますが、「漏洩リスクが高く危険」とまとめてしまうことなく、どのような企業がどの部分のリスクを負うのか、データ化すること、データに依存することの危険性は何なのか、といったことにきちんと答えている点は好感が持てます。必ず到来するビッグデータ時代に向けて、その波に乗り遅れないようにするには、このようにきちんとデータに向き合う必要があるのだと感じました。
全ての事柄をデータ化し、世の中を見えるようにする。このことは非常に魅力的ではありますが、一方で著者はデータは「万能ではなく、人間性が大切なことは変わらない」と警鐘も鳴らしています。日本でも多くの企業がビッグデータに注目している今の時代、このような本の価値は大きいと思います。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
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