読書日記508:〈リア充〉幻想ー真実があるということの思い込み



タイトル:〈リア充〉幻想ー真実があるということの思い込み
作者:仲正 昌樹
出版元:明月堂書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
幸福はどこにある?溢れる言葉や情報の渦の中で、いったい私たちは何を求めて生きればよいのか?「真の○○」があるという幻想に囚われた現代ニッポンの閉塞状況を仲正昌樹が解体する!“孤独”であることを怖れないための入門書。


感想--------------------------------------------------
ウェブで見かけた本で、そのタイトルに手に取ってみました。「<リア充>幻想」というタイトルには若干のおたくっぽさを感じますが、その中身は金沢大学法学類教授である仲正昌樹さんと編集者の対談形式で描かれており、「リア充」、「格差」、「人間力」、「友達」といった概念についての仲正さんの持論が展開されていきます。

「リア充」、「格差」、「人間力」といったものを「幻想」として扱っていく本書ですが、その背景には数年前に起きた秋葉原での連続殺傷事件があります。あの事件の加害者であるKはなぜあのような犯行に及んだのか?あの事件を引き起こした背景にはどのような心理があるのか?「リア充」、「格差」、「人間力」などといった言葉をキーワードに、それを紐解いていこう、というのが本書の主旨と感じました。

本書はなかなか感想が書きにくい本です。仲正さんの言葉を主に議論は展開していくのですが、その主旨を「まとめる」というのが非常に難しいです。まとめてしまうと意味が違ってきてしまう気がするし、「要するにこういうことだよね」となかなか言いにくいなあ、と感じました。なので、いくつか印象に残った文をベースに感想をかいてみたいと思います。


”無条件に「やりたいこと」なんて基本的にない、と思った方がいい。魅力的な職業があるように見えても、そのイメージの大半は幻想で、それほど実態があるわけではない。”

まさにその通りだと思います。「あの職業に就ければ・・・」なんて夢は持たない方がいいかと個人的には思います。結局、自分がその仕事を好きで続けられるか、そこで何をするか、でしょうね。正直、職業を自由に選択できるだけでも今の世の中ではかなり幸運なのでしょう。

”ごく狭いサークルの中で、そこでだけ通用するルールを身に付けて、それがどこでも通用するかのように思うからバランスが悪くなる”

これもかなり同感できる文です。まさに井の中の蛙状態で、下手すると「自分たちは世界一」みたいに考え出したりする人たちもいたりします。客観的に世の中を見れていない、世の中を知らなすぎる、といった感じですかね・・・。

”「真のナントカ」を純粋に追求しすぎると必ず行き詰まる”

これが本書の要約的な文かもしれません。「真の○○」なんてない。でも、そう言い切れる人は、まさしく何不自由なく生活できている人なんだろうな、とも思います。人は通常、必ず何らかのコンプレックスを抱えていて、特にそのコンプレックスに触れる点に関しては「真の○○」を求めがちです。そしてまたそれが分かっているからこそ、その琴線に触れるように人々に「真の○○」を求めるように仕向けていき、そこで利益を得ようとしている人たちがいたりするのでしょうね。

”「孤独」に対して開き直って、何が悪いのか”

〆の言葉ですね。これはいい言葉と感じました。「友達が多い」という人も、「友達が少ない」と言う人同様にやはり孤独を恐れているのだろうな、と感じます。いろいろなことを恐れ、繊細になりすぎてしまっているのが現代の日本人かと思いました。著者のように開き直れる人はなかなかいないかもしれませんが、、、。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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