読書日記486:know by野崎まど
タイトル:know
作者:野崎まど
出版元:早川書房
その他:
あらすじ----------------------------------------------
超情報化対策として、人造の脳葉“電子葉”の移植が義務化された2081年の日本・京都。情報庁で働く官僚の御野・連レルは、情報素子のコードのなかに恩師であり現在は行方不明の研究者、道終・常イチが残した暗号を発見する。その“啓示”に誘われた先で待っていたのは、ひとりの少女だった。道終の真意もわからぬまま、御野は「すべてを知る」ため彼女と行動をともにする。それは、世界が変わる4日間の始まりだったー。
感想--------------------------------------------------
本作の著者である「野崎まど」の名前は最近よく聞きます。「2」、「[映]アムリタ」などのSF作品を発表し続けている作家さんで、特に本作は評価が高いようですので読んでみました。
人の脳に電子葉が埋め込まれ、直接脳と外界でデータ交換が行なえる時代。情報庁の御野・連レルは恩師 道終・常イチに誘われるようにして、一人の少女とであった—。
SFにはいろいろなタイプの作品があると思いますが、本作の特色は何と言ってもその世界観の構築の仕方ですね。情報材が適用され、あらゆるものが情報を発する世界。誰もが脳に電子葉を埋め、その電子脳で世界の発する情報を認識する世界。この世界をよくこんなに矛盾なく創りこめたなあって思います。また本作を読んでいると、伊藤計劃さんの作品、特に「ハーモニー」を思い出します。名前のつけ方といい、かなり影響を受けているのではないかと思います。
話のところどころに先進的な未来の世界と対照的に、舞台となる京都の神社や古典の話が出てきます。曼荼羅、覚悟、イザナギ・イザナミ、そしてエデンの守護者、智の天使などの話はいいですね。未来の科学の進んだ世界といいコントラストを描いていると感じました。
物語の進み方、ストーリーはありがちなものではないですが、エキサイティングなもの、とも感じられませんでした。終わり方は凄くうまいです。あと登場人物は、二十代の男と女子中学生というコンビがちょっと狙いすぎかなと思いました。十四歳、というのがね、、、。ちょっと幼すぎかと。
一方で少し気になる点は、状況描写や会話で冗長と感じられる場面があることですね。物語を読むのを止めようとは全く思わないのですが、少しスピードが落ちる、と感じる箇所がありました。
SF作品としてはかなり軽い作品だと思いますので、物語に入り込める方なら簡単に読み終えることが出来ると思います。三百ページ以上ですが、そこまでの厚さも感じさせません。非常に読みやすく感じました。以前に紹介した「マルドゥック・ヴェロシティ」がヘビー級だとすると、本作はフライ級くらいですかね。。。万人受けするのは間違いなくこちらです。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
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