タイトル:勝ち続ける意志力
作者:梅原 大吾
出版元:小学館
その他:
あらすじ----------------------------------------------
17歳にして世界一になった。2010年8月、「最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」としてギネス・ワールドレコードに認定された。職業、プロ格闘ゲーマー。これから僕は、「世界一になって」、そして「世界一であり続けることによってしか見えなかったこと」について話をしたいと思う。それは「勝つために必要なことは何か?」「なぜ多くの人は勝ち続けることができないのか?」という話だ。いわば「世界一になり、世界一であり続けるための仕事術」とも言えるかと思う。その技術は、ゲームの世界ではもちろんのこと、それ以外の世界でも必ずや、前進のためのお役に立てるだろう。
感想--------------------------------------------------
本書は格闘ゲーム界ではその名を知らない人はいない、世界チャンピオンにしてギネスブックに「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてその名が刻まれている梅原大吾さんの著作です。某おちゃらけ社会派のブログでも取り上げられていた本ですね。本書ではこの梅原さんがプロゲーマーになるまでの道のり、常々考え続けていることなどが書かれています。二百五十ページほどの本ですが、その中身は非常に濃いです。
本書の最初には格闘ゲーム界の最高峰の大会、「Evolution2004」で伝説となっている梅原の逆転劇について書かれています。youtubeにアップされたこの試合の動画の再生回数は2000万回にも上るそうですね。私自身も格闘ゲームは少しやるのですが、この動画は本書を読む前、かなり以前に見たことがありました。ゲームをやる人にしかわからないかもしれませんが、本当に奇跡のような勝ち方です。この動画を見た時は素直に感動し、「分野に関係なく、本当のプロフェッショナルと呼ばれる人は、見ている者に感動を与えるものなんだ」とつくづく感じたことを覚えています。
本書はこの世界チャンピオンである梅原さんが自身の生き方について語った本です。徹底的に「ゲーム」という一つのことに拘り続け、頂点を極めた著者。しかしその考えていることは、常に一貫しています。私見になりますが、端的に言ってしまうと、
・人の何倍もの努力とその結果の分析を続ける
・「変わり続ける」ということを止めない
・「自分が成長する」ということを最重要視する
といったことです。著者はこれらのことを本当に徹底的にやっていきます。
一時の勝利ではなく、「勝ち続ける」こと。これがどれだけ難しいことか本書を読んでいるとすごくよくわかります。どの分野でも一時の人気やまぐれ的な結果で頂点に立つ人はいますが、その勝利を「続ける」というのは別次元の難しさです。そしておそらくそうした人たちは、分野は違えどこの著者と同じようなことを考え実行しているのだと思います。
スポーツ界の名選手と呼ばれる人たち、さらにはLegendと呼ばれる人たちは皆、深い自問と迷いの中で戦い続け、その代償として奇跡のような結果を得られるのだ、ということがよくわかります。そして特にこの著者のすごいところは、その結果を得るための努力を誰に頼ることもなく、独力で成し遂げていっているところです。そしてそれを独力で 成し遂げたからこそ、それは揺るぎのない自信に変わり、勝利の源泉となっていくのですね。
読み進めていくうちに途中から本書はもしかしたら非常にすごい本なのではないか、と感じてきます。世界チャンピオンの座に就き続け、Legendと呼ばれる人が自身について語った日本語の本というのは非常に少ないです。まず、どんな分野でも「世界チャンピオンに居続けている日本人」というのは非常に少ない。そしてそのLegendが自身についてここまで客観的な分析を交えながら深く語った本というのはそんなにないのではないでしょうか。自身を見つめ、あくなき挑戦を続け、努力という言葉では表せないほどの努力を続けるチャンピオン。すげーな、っていう感じです。どこまで彼がやれるのか、本当に楽しみです。
この梅原さんについては某サイトでも好意的に取り上げられていましたが、その中でゲームやアニメと言った日本特有のカルチャーについて語られた文章がありました。
-------------------------------------------------------------------------------
日本には、それらのカルチャー(ゲーム、アニメなど)に対する根本的な尊敬の念が欠けている。それが重要な文化のひとつであり、研究に値する知的分野であり、っていう社会意識がない。
だから Legend と呼ばれるほどのゲームの達人にも、それを生んだゲーセンという場所にも、一流という概念をかぶせられない。これは漫画やアニメなど、他の分野に関しても全く同じ。
そして、それがために「人気があるから、もっと売って外貨を稼ごう」という発想にはなっても、知的におもしろい分野だから研究しよう、そういう道に進む人をもっと増やして、世界のエクセレンスを集めよう、という発想にならない。
-------------------------------------------------------------------------------
日本でゲームやアニメなどの文化が認められていないことについて触れた文章ですが、これは本当に深く同意できる内容です。このサイトでも漫画やゲームについて取り上げていますが、最近のゲームや漫画のクオリティは非常に高いです。独創的な作品も数多くあり、日本の創造力はこういったところに発揮されているんだな、と感動すらします。これは大企業が支配的で欧米の実績ありきでないと前に進むことの難しいモノ創り分野では発揮されることのない力ですね。これが発信地である日本で認められず、欧米で認められているのは皮肉ですね。(まあ国が認めたりしたら逆効果かもしれませんが…)
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
↓よかったらクリックにご協力お願いします
レビュープラス
この記事へのコメント