読書日記462:世界から猫が消えたなら by川村元気
タイトル:世界から猫が消えたなら
作者:川村 元気
出版元:マガジンハウス
その他:
あらすじ----------------------------------------------
僕の葬式。僕の枕元に集まる人はどんな人たちだろうか。かつての友達、かつての恋人、親戚、教師、同僚たち。そのなかで僕の死を心から悲しんでくれる人は、何人いるのだろうか。僕と猫と陽気な悪魔の7日間の物語。
感想--------------------------------------------------
本作は映画プロデューサーである作者が書いた初の著作です。本作は出版当時かなりの人気となり、本屋大賞の候補にも選ばれていた作品です。ようやく読むことができました。
重病により近いうちに死ぬことがわかった僕。そんな僕の前に陽気な悪魔が現れて、こう囁いた。「この世界から何か一つ消すたびに、きみの命を一日延ばしてあげよう—」
あと数日の命となった主人公。その主人公が一日を生きるために消していくものを前にして、自分の人生を振り返り、本当に大切なものに気付いていく。そんな作品です。二百ページちょっとと短い作品であり、行もそんなに詰まっているわけではないのですが、読み手に感動を与えてくれる作品かと思います。
主人公である「僕」の元恋人、飼い猫、既に他界している母、地元の時計屋で働く父。主な登場人物はこのくらいです。そして「僕」が思いをめぐらすのも主にこの人たちです。でも、いざ死ぬときになって過去を振り返ると、そこには様々な思い出があり、いろいろな記憶があり、人生の様々な場面での優しさに気付いていきます。
個人的には特に恋人との下りが良かったです。小さな街の中で、出会っても話すことは無いのに、電話をしているときだけ何時間でも会話を続けることのできる僕と恋人。自分たちの恋が小さな街の中の決まったルールに従ったものだと気付いて別れを決めた二人。そして死を前にして再開する二人。そこに感動的な言葉はないですが、逆にそうした言葉がない分、本当の気持ちが伝わってくるようで、書き方に上手さを感じました。
あとはやはり父と母の下りですね。父と反りの合わない僕。そしてそうした父と僕を常に気にかけていた母。大切なことに気付くのはいつだって遅くなってしまってから、取り返しがつかなくなってしまってからなのに、その思い出ばかりが輝いて見えます。
最後に「僕」がする決断と、その後の行動はとても素敵です。自分の人生を振り返ったとき、そこには誰しもが必ず輝くものを持っているんだな、と感じさせる一冊でした。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
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