読書日記460:一刀斎夢録 上 by浅田次郎



タイトル:一刀斎夢録 上
作者:浅田次郎
出版元:文藝春秋
その他:

あらすじ----------------------------------------------
「飲むほどに酔うほどに、かつて奪った命の記憶が甦る」ー最強と謳われ怖れられた、新選組三番隊長斎藤一。明治を隔て大正の世まで生き延びた“一刀斎”が近衛師団の若き中尉に夜ごと語る、過ぎにし幕末の動乱、新選組の辿った運命、そして剣の奥義。慟哭の結末に向け香りたつ生死の哲学が深い感動を呼ぶ、新選組三部作完結篇。



感想--------------------------------------------------
浅田次郎さんの作品です。この方の作品はかなり前に「鉄道員(ぽっぽや)」を読んだことがあるだけです。本作と「壬生義士伝」、「輪違屋糸里」の三作で、「浅田次郎の新撰組三部作」と呼ばれているようです。

明治天皇が崩御し、大正の世となった日本。梶原中尉は剣術のライバルである榊から風変わりな老人の話を聞く。その老人とは、かの新撰組 三番隊隊長 斎藤一であった—。

新撰組を描いた作品と言うと、すぐに思い浮かぶのは司馬遼太郎さんの「燃えよ剣」と「新選組血風録」です。どちらも優れた作品でしたが、特に土方歳三の生涯を描いた「燃えよ剣」は傑作だと感じていました。

しかし本作も負けず劣らず相当に面白いですね。新撰組 三番隊隊長 斎藤一と言えば、一番隊隊長 沖田総司に負けず劣らずの剣の達人と言われている人です。斎藤一を一躍有名にしたのはやはり「るろうに剣心」でしょうね。実写映画版では斎藤一を江口洋介さんが演じていました。

本作は幕末の世を生き抜いた斎藤一が大正の世から幕末を振り返る、という作品です。人を切ることに明け暮れた幕末の世、そして大政奉還により追われる身となった新撰組。独自の死生観を持って人を斬り、死に場所を求めていく斎藤と新撰組の面々。斎藤一こと一刀斎が当時を振り返っているため、語り口は斎藤の一人称ですが、この一人称が非常によく生きています。この語り口なしでは本作はここまで面白くはならないかと思います。

また「大正の世から幕末を振り返る」という描き方も非常に生きています。斎藤一の生き方と対照的な生き方をする人物として乃木稀典が出てきます。二○三高地で多くの犠牲を出した大将ですね。西南の役での不始末を侘び、明治天皇の後を追って殉死する乃木大将と、死に場所を求めつつも死ぬことができずに生き延びてきた斎藤一。同時代を生きた死生観が全く異なる二人描くことで物語にいいコントラストが描かれています。

本書を読んで思うのは、何よりも日本語のうまさ、文章としての深みです。売れっ子作家、人気作家という人は多くいますが、こうした日本語の文章をしっかりと書き、文章の美しさで読み手を魅了できる作家さんというのは随分と少なくなってきた気がします。少し以前で言えば吉川英治さんや司馬遼太郎さんでしょうか。こうした方々の作品を読んでいると本当に日本人として生まれて日本語の作品を読むことができてよかった、と感じます。

さて上巻は新撰組がだいぶ追い詰められたところで終わります。下巻も楽しみに読むことにします。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):


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