読書日記445:挑戦〈新たなる繁栄を切り開け! 〉 (大前研一通信 特別保存版 PartVII)



タイトル:挑戦〈新たなる繁栄を切り開け! 〉 (大前研一通信 特別保存版 PartVII)
作者:大前研一他 (著), ビジネス・ブレークスルー出版事務局 (編集)
出版元:日販アイ・ピー・エス
その他:

あらすじ----------------------------------------------
「この混乱の時代に求められるのは、アカデミック・スマートではない。現実の中で自ら考え、 答えのない問いに自分なりの答えを見つけ出していくストリート・スマートである。」~本文より ~ 盛田昭夫、本田宗一郎、松下幸之助など、世界に冠たる日本ブランドを築き上げた戦後第一世代の経営者と比べ、現在の日本のビジネスパーソンが圧倒的に劣っているのは、世界に挑戦する「気概」、「アンビション」 だと指摘する大前研一が、世界の教育トレンドから、OECD諸国の平均より著しく低い日本での社会人への 再教育の必然性や、道州制、文科省への提言、グローバル人材の育成法などを語り、自ら学長に就任したビジネス・ブレークスルー大学、大学院などで学ぶ学生や卒業生の「ストリート・スマート」像に挑戦する道程や声も紹介。更に、<原発・再生エネルギー問題>、<世界の教育トレンド>、<日本で政権交代がうまくいかない本当の理由>等、様々な事象を大局的に俯瞰し、提言をする大前研一の発信に加え、そこから学び取っていく学生達の問題解決思考の一端もご紹介しています。 激変する時代を生き抜けるスキルアップを望む全ての人へ贈る、アンビションを刺激する「読んで」、「見て」、「身につける」、約100分間の映像(DVD)付書籍です!


感想--------------------------------------------------
レビュープラス様から献本いただきました。いつもありがとうございます。今回は電子書籍として献本いただきました。

本書は大前研一通信に掲載された記事から抜粋されたものを集めた本です。本書のテーマは「教育」ですね。大前研一さんが主催するBBT(ビジネスブレイクスルー大学)の話を始め、欧州やアジアと日本の教育の比較など、教育についていつものように深い論を展開されています。

大前研一さんの書籍を読むといつも感じることですが、この方の視点にはぶれがありません。それだけでなく、例えば今回の書籍のテーマは『教育』というテーマですが、教育に関する知見が凄く深いことが分かります。もちろん調査されているのだと思いますが、ご自身の興味のあることに関して常に最新の知識を幅広く獲得されていくこの姿勢には本当に頭が下がります。

先述のように本書の最初では教育をテーマとして論を展開されていますが、ここで言われているのは、「これからは教育がどの国においても最も重要となる」ということと、「今の日本の教育は中途半端な位置にある」ということですね。北欧諸国は「覚える」ことではなく「創出する」方向に教育の舵を切ることで成功し、一方で中国、インドなどのアジア諸国は詰め込み教育に特化することで成功しています。日本は高度成長時代の名残が学校教育にも残っていて、極端に言ってしまうと「社会に出ても何の役にも立たない教育」を大学で教えているということになるようですね。これには私も同意できます。私自身の経験から言っても、学校教育で社会に出て役に立ったことは、多くはない気がします。(人生を豊かにする、という意味では役に立っていると思いますが)

文科省の教育プログラムに任せるのではなく、道州制を導入し、各道州で教育の質を比較するようにするなどが解決策として考えられるようですが、正直、まだまだ省庁の体質が古いため厳しいかな、と感じます。個人的には、こうした「現状への危機感」というものは若い世代の方がはっきりと感じているように、思います。これから子供を産み、育てて行く人々にとっては「子供の教育」はまさに大きな課題となるからでしょうね。こうした若い人の意見がうまく既得権益層の壁を乗り越えて実現するにはどうすればいのだろうか、とか考えてしまいます。

本書にはトピックとして面白い話題が多く掲載されているのですが、特に私にとって面白かったのは「日本で政権交代がうまくいかない本当の理由」と題して、「なぜ自民党以外が与党になれないのか」について書かれた記事です。「外交が完全に属人化されている」など四つの理由が書かれていますが、この記事を読むと日本は実は一党独裁政権なのではないかとさえ思われてきます。自民党以外の党が与党となると機能不全を起こし、結局は自民党が政権とならざるを得ないという状況は本書で書かれているように中東の「アラブの春」現象(クーデターで独裁政権を倒したはいいけれど、その後に政権を担える政党がいないため混乱に陥る現象)によく似ていると感じます。遠く離れた国との間によくこのような共通点を見出すものだ、とも思います。

こうした状況を考えると、日本が健全な政党政治の国になるにはどうすればいいのだろうか、といったことを考えてしまいます。属人化されている箇所や、自民党が過去に他国と交わしてきた密約などをきちんと文章化しておく必要がありそうですね。…こうした下りを読んでいると、日本は企業も政権も同じなんだろうな、とも感じます。記事に書かれている内容は政権に関することですが、このような漠然とした「人同士の繋がり」などで物事が動いていくのは日本の企業もしかりで、他国の人にはなかなか理解しにくいところではないかと思います。よい面もあるかと思いますが、やはり海外の他の国と対等に向き合って行くにはもう少し分かり易い政権運営が必要な気もします。

読みながら思うことですが、相変わらず大前研一さんの視点は鋭く、時代を先読みした記事が多いです。時代を正確に見通す眼がある方だけに、その見通す先に対して、我々がどのような対処を行なうべきか考える必要があるとも感じました。定期的に刊行されているこのシリーズを読むだけで時世の流れや問題点が分かりますね。読みやすいですし、非常にお得なシリーズの本だとも思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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