読書日記412:モンスター by百田尚樹



タイトル:モンスター
作者:百田 尚樹
出版元:幻冬舎
その他:

あらすじ----------------------------------------------
田舎町で瀟洒なレストランを経営する絶世の美女・未帆。彼女の顔はかつて畸形的なまでに醜かった。周囲からバケモノ扱いされる悲惨な日々。思い悩んだ末にある事件を起こし、町を追われた未帆は、整形手術に目覚め、莫大な金額をかけ完璧な美人に変身を遂げる。そのとき亡霊のように甦ってきたのは、ひとりの男への、狂おしいまでの情念だったー。



感想--------------------------------------------------
先日読んだ、「永遠の0」の作者、百田尚樹さんの作品です。「海賊とよばれた男」で本屋大賞を受賞し、本作「モンスター」が高岡早紀さん主演で映画化されたりと、今、絶好調の作家さん、という印象です。

醜い風貌に生まれたため誰にも相手にされず、周囲から蔑まれて育った和子。整形により美しい顔へと変貌を遂げた彼女は名前を変えて初恋の男性に近づこうとする—。

「永遠の0」でも感じたこの著者の特徴なのですが、とにかく調査に裏付いた記述、描写が作品ですごく生きています。「永遠の0」では戦争、本作では美容整形と分野は全く違いますが、その調査の深さ、幅の広さ、解釈の仕方、描き方というのは非常に優れていると感じました。
本作でも、顔のどの部分をかえるとどのような印象を相手に与えるのか、目や鼻がどうだと美しく見えるのか、美容整形としてどのような方法があるのか、といったことを読者を飽きさせることなく丁寧に詳細に説明し、読んでいてなるほどと思わされる箇所が非常に多かったです。

例えば、「平均的な顔を人は美しいと思うようにできている」「光背効果により何か一つに秀でた人(=美しい人)は他の全てが優れているように思われる」といった下りは非常に面白く、学術的にも証明されているようで、ふんふんと思いながら読み進めました。

一方で物語としての構成がどうかというと、これは私はいたって普通、良くも悪くもない、と感じました。醜い風貌の女性が美しく生まれ変わり、初恋の男性に会いに行く—というのはストーリーとしてはよくありそうです。ただ、その「美しく生まれ変わる」という部分の描き方が、先述の通り、リサーチに基づいて非常にしっかりと、読者の興味を引くように書かれているため、全体の物語がすごく面白く読めてきます。これは「永遠の0」も同じと感じました。「永遠の0」でもおそらく物凄い時間をかけて調査されたであろう、戦争に関する話が、読者に分かりやすいように、それでいて真実に則して、敬意を持って描かれていて、それが読者を惹きつけ、「永遠の0」を名作足らしめているのだと思います。(「永遠の0」の中でも、祖父の足跡を辿る姉弟の物語の部分は、ほとんど読者に意味を持たないかと思います)

「永遠の0」と比較して本作は物語の占めるパートが広く、その分、ストーリーの構成力や表現力が重要になるのですが、その部分もとても読みやすく、「永遠の0」よりもはるかに進歩していると感じます。しかし一流のストーリーテラーと評される作家さんと比較すると、いたって普通に感じられました。何度も繰り返しになりますが、やはり調査力とその調査した内容の書き方で魅せる作家さんですね。著者はもともとテレビ番組の放送作家なので、そこでのた経験が生かされているのかもしれません。

しかし整形により美しくなった和子への男の態度の豹変ぶりは、読んでいて笑ってしまうほどです。いくらなんでもここまでじゃないだろ…と思ってしまいますが、、、。男の愚かさを感じます。。。蔑まれて育った和子の心の歪みや、美人に言い寄る男の滑稽さといったものの描き方はうまいと感じました。そして最後は、、、和子は幸せだったのか、微妙な結末ですね。男の情けなさばかりが印象に残りました。

本作は映画化されるにあたって、大九明子さんという女性の方が監督をつとめられます。読んでいて感じたのですが、本作は同じ物語、脚本でも男性の目線から描くか、女性の目線から描くかで読む者、観る者への印象が大きく変わる作品だと思います。映画化された本作の印象が、本の印象とどう変わるのか、楽しみではあります。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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