読書日記385:進化する教育 (大前研一通信特別保存版 PARTVI)



タイトル:進化する教育 (大前研一通信特別保存版 PARTVI)
作者:大前研一
出版元:日販アイ・ピー・エス
その他:

あらすじ----------------------------------------------
世界に飛躍する人材育成とは?進化する「学び」のスタイルを公開! 「読んで」、「見て」、「身につける! 」大前研一通信特別保存版第六弾。 かねてから20世紀の工業化社会で通用した教育から、制度そのものを21世紀型の教育に変革する必要性を訴えてきた大前研一は、自らが学長に就任し設立した100%オンラインのみで経営学士を取得できる、日本唯一の大学:ビジネス・ブレ ークスルー(BBT)大学や、本邦初の遠隔教育法によるMBAプログラムを開講した BBT大学大学院、また海外MBAの取得も可能なBOND-BBT MBA(ボンド大学大学院)をはじめとし、「世界に通用する人材」の育成に今まで取り組んできました。 今回は、そのBBT大学、及び大学院(BBT、BOND)の概要と、更に大前研一が開発、改良、進化を遂げた最先端のサイバーディスカッションツール:エアキャンパス(AC)上で、実際に大前研一の発信(教育、政治、原発・エネルギー、ビジネス関連問題)から、世代や業界、そして国境をも超えて学ぶ多様な学生の皆さんの 声なども掲載し、互いに脳力を深化させる学びのスタイルや、その一端をご紹介。 更にBBT大学入学時に実際の受講前に受ける大前研一のオリエーテーション(一部)も<特典掲載>し、 あなた自身の脳力をも刺激します! 書籍を「読んで」、DVDを「見て」頂ければ、あなたの脳力を深化させ得るBBT教育プログラムのエッセンスも感じ取って頂くことが出来るでしょう。 あなたの脳力は進化(深化)する!


感想--------------------------------------------------
本書はレビュープラス様に献本いただきました。いつもありがとうございます。
今回は電子書籍として提供いただきました。今後はこのような形式での提供が増えていくかもしれませんね。

本書は「警告」や「慧眼」と同様の大前研一通信・特別保存版です。本書には世界的な経営コンサルタントである大前研一さんの政治や経済に関する様々なメディアでの発言や執筆が掲載されています。また中盤では主に教育に関連して、御自信が展開されているBBT(ビジネス・ブレーク・スルー)大学についても多くの誌面を割いて書かれています。いつものことですが、気づかされることの多い内容です。

まず最初に取り上げるべきは本書のタイトルともなっている教育問題でしょう。
冒頭で大前研一さんは、「記憶中心の従来型の教育の時代はもう終わり、答えのない解について自分で学び、考え、実行に移す時代が来ている」ということを言われています。
これは大前研一さんが常々言われていることであり、また私がよく読むchikirinブログの著者chikirinさんも「自分のアタマで考えよう」というタイトルの本を出されていたりと、各方面で様々な方が言われています。

「自分の、頭で、考える」

しかし、この言葉って当たり前のことですよね?
それができなくなっている大きな原因として、本書では「現行の教育」を大前さんが挙げてらっしゃいますが、それ以外にも、少し大げさかもしれませんが横並びを良しとし、他人とずれることを嫌う日本社会の構造も原因として挙げられるかと思います。「他人と同じ」ことがよいこと。「他人と異なる」ことは悪いこと。こうした考えではなかなか個人の考えを貫くことは難しく、結局は他人の考えにつき従い、「自分で考えること」を放棄することにつながるとも感じます。

少し話が飛びますが、子供を見ているとよく感じるのですが、子供というのは本当に「学ぶ」のが大好きですね。いたることを不思議に感じ、「なぜ?」「なぜ?」という問いを頻繁に発します。こういう姿を見ていると、「自分の頭で考える」という行為は本質的に人間誰もに備わっている行為なのだと感じます。逆に考えると、現在の教育や社会制度は人間が元来持っているこの行為を潰してしまっているわけで、歪んでいるのでしょうね。人間が元来持つ「学びたい」という要求を伸ばすと同時に「自分の頭で考えること」、「他人と異なる考えを持つこと」をしっかりと認めることが社会・教育で重要なのでしょう。本書を読んでいくとBBT大学はこうしたところをしっかりと伸ばす教育をとっているよう に感じられます。

また教育の中で特に重視されている項目として、「ITと経営」「論理的思考」「コミュニケーション力」の三つを大前研一さんは挙げてらっしゃいます。論理的思考は当然必要ですが、特に面白いのが、ITと経営という項目です。…従来の理系と文系なんていう括りはこれからの社会では何の意味も持たないのかもしれませんね。またコミュニケーションも単なるグローバル化にとどまらず、TwitterやSNSといったサイバー空間での様々な形式の双方向のコミュニケーションが当たり前になってきて、それに追随していくだけのITの知識なんかも当たり前に必要になるのでしょう。BBT大学のAirCampusのような仮想空間を使用した議論も当たり前になされるようになるでしょうし、個人的にはこういう場がもっと増えると いいなあ、と感じます。

もう一つ、印象に残った記事は、IBMのパルサミーノ会長の発言についての記事です。IBMコモディティー化しつつあったPC事業をレノボに売ることで「高付加価値を提供する企業」という地位を保つことに成功しています。この記事の中でパルサミーノ会長は、「長期的な視野に立って経営するために必要な五つの問い」を挙げています。この五つの問いを見ると、読んだことある人はすぐに経営の名著、「ビジョナリーカンパニー」を思い出すのではないでしょうか。

「確固とした企業の基本理念を貫き、それ以外の全ては継続的に変えていく」

ビジョナリーカンパニーで言っていたことは単純にこれだけであり、パルサミーノ会長の五つの問いが全てこの言葉の形を変えたものであるということと、そしてIBMがまさに「ビジョナリーカンパニー」であることには深い関係があると感じます。また残念ながら現在の日本の電機業界などを見ていると、こうした柔軟性を持った企業というのは非常に少ないと感じます。「何を売っているか」ではなく、「どのような理念を持っているか」が企業の価値なのでしょうね。そのことに気付いた人が強いリーダーシップを発揮できない限り、日本企業に再生の道はないかとも感じます。

しかし大前研一さんの視点は広いですね。電力問題、スティーブ・ジョブズの死、大阪「都」構想と世の中の様々な問題を掬い上げ、それらの問題を様々な角度から多角的に分析し、様々な事象と結び付けてその問題の持つ真の意味を明らかにしていきます。こうしたものの見方、考え方ができて、なおかつその考えがぶれない人は今の世にも少ないのではないかと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):


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