タイトル:JOJO’S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN
作者:西尾 維新 (著), 荒木 飛呂彦 (著)
出版元:集英社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
かつて空条承太郎の手によって焼き捨てられ、エンリコ・プッチ神父が切望したDIOのノート。世界の深淵で、DIOが探し求めた「天国」とは。小説家・西尾維新が、禁断の手記を再生する。“VS JOJO”第2弾。
感想--------------------------------------------------
荒木飛呂彦さんによる、改めて語る必要も無いほど有名な「ジョジョの奇妙な冒険
プッチ神父が渇望し、空条承太郎の手によって消却された「ディオの手記」そこにはあのディオの知られざる思いが書かれていたー。
本作の舞台は第三部。そして物語は手記の形をとり、ディオの一人称で語られていきます。ディオの生い立ちから始まり、ジョースター家に入り、ジョナサンと対立し、石仮面の力によって吸血鬼化して、最後のジョナサンとの戦いまで、という第一部の内容を回想という形で描き、そして日本からエジプトへと向かう承太郎の一行との戦いという第三部の内容を現実という形で描き、この二つを交互に描きながら「なぜ天国を目指すに至ったか」というディオの想いが綴られていきます。このような独白の描き方はさすがに西尾維新さんが得意としているだけあってうまいです。文章を読み進めながら「ああ、西尾維新さんの作品だな」と実感できます。
ただ、残念ながら本作に限ると残念な点が多くありますね。
まず本作は上遠野浩平さんの手による「恥知らずのパープルヘイズ」と違って戦闘場面が全くありません。ディオの手記なのですから当然と言ってしまえば当然ですが、目新しいスタンドが出てくる訳でも、新しい敵が出てくる訳でもありません。ジョジョファンにとっては既に知っている内容が新たなディオの立ち位置から語られているだけで、刺激的な内容が全くないんですね。これが非常に残念な点の一つ目です。
残念な点の二つ目は、この小説で描かれているディオが、第一部、第三部で描かれているディオと、別人?と思わせるほど性格が異なる点です。ジョナサンに敗北した回想の途中や、承太郎一行に放ったスタンド使いの敗北の知らせを受けたりすると、ディオは簡単に嫌な気分になったりして、簡単に心が揺れ動きます。ここが非常に「ディオらしくない」と感じてしまいます。「化物語
本作でエジプト九栄神とホル・ホースを前にしてディオは、「もしもこの十体のスタンドがチームを組んで同時に襲って来たら、さすがのわたしもひとたまりもなかろう」とか言っていますが、原作を読んでいると、とてもディオはそんなこと言いそうもないですね。エジプト九栄神とホル・ホースどころか、他のスタンド使いが全部揃っても決して自分の負けなど認めず、逆に傲岸不遜にふん、と鼻を鳴らして見下しているのがディオです。このあたり、ディオという存在の描き方がやはり根本からずれているなあ、って感じてしまいました。
西尾維新さんの作品は、一人称で主人公の独白か、主人公と誰かの会話のやりとりで成り立つことが多いため、確固たる信念を持って自分の道を迷わず進んで行くキャラクターは描きにくいのだろうな、って感じました。迷わないキャラって内面や独白を描いていても面白くないですからね。本作のディオとか、六部のプッチ神父とかは迷いが無く、確固たる信念の基に行動しているため、西尾維新さんの作風にははまりにくそうです。逆に西尾維新さんが悪役を描くのであれば、平凡なサラリーマンという表の顔を持ちつつ暗躍する第四部の吉良や、二重人格の第五部のディアボロなんかの方が、内面に葛藤を抱えていそうで描きやすいだろうなって感じました。
さて、「ジョジョの奇妙な冒険
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B
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