読書日記369:ヒトリシズカ by誉田哲也
タイトル:ヒトリシズカ
作者:誉田哲也
出版元:双葉社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
見えそうで見えない。手が届きそうで届かない。時と場所、いずれも違うところで起きる五つの殺人事件。その背後につらつく女の影。追う警察の手をすり抜ける女は幻なのか。いまもっとも旬な著者の連作ミステリー。
感想--------------------------------------------------
「ストロベリーナイト」、「ソウルケイジ」など姫川玲子シリーズで有名な誉田哲也さんの作品です。本作は十月からWOWOWで連続ドラマ化もされます。ドラマに先駆けて呼んでみました。
小金井で発生した拳銃による殺人事件。被疑者逮捕の後に明らかになったのは、「被害者は、一度止まった後に動いた弾丸によって殺された」という事実だった—。
本作は第一章の「闇一重」から始まり、「独静加」の第六章まで六章の構成になっています。各章で扱われるのは、暴力団構成員の射殺事件、元暴走族構成員の刺殺事件、暴力団同士の銃撃抗争事件など独立した事件であり、捜査に当たる面々も独立しているのですが、各事件の背後には一人の女の姿が見え隠れします。そして最後の章で全ての物語が繋がっていく—という構成です。東野圭吾さんの「新参者」のような構成と言えばわかりやすいでしょうか。
各章で扱われる事件の描き方はやはり刑事小説をずっと書き続けている著者だけあってうまいですね。こうした刑事小説を書かせたら、今、この方は日本で五本の指に入るのではないでしょうか。姫川玲子シリーズで培われた刑事小説の描き方がうまくこの小説にも反映されています。
一方で、読んでいて感じたのですが、最終章「独静加」での物語の終わり方が呆気なさ過ぎるように感じられました。あまりにも呆気ない物語の終末と、救いの感じられない結末。ネタバレになるのであまり書けないのですが、この女に対してはもっとうまい終わらせ方、見せ方があってもよかったのでは?と感じられます。
悪女を描いた作品というと、私の中ではすぐに東野圭吾さんの「白夜行」や「幻夜」が思い浮かびます。その美貌で他者を利用していく悪女の凄まじい生き方を描いているこれらの作品に比べると、本作では女の描き方がまだ弱いかなあ、って私には感じられてしまいます。短編形式にしている点はいいのですが、ヒロインが不幸な過去を背負って、暴力を利用して生きていく強く悪い女である一方で、中途半端にいい人として描かれてしまっているのが少し弱みに繋がっているのかなあ、って思ってしまいました。もっともっと悪く強く描くことで、その裏のほんのわずかな優しさをもっと効果的に描くこともこの作者ならできるのでは?と感じました。
ドラマではこの女—静加の役を夏帆さんが演じるそうですね。悪女の役をどれだけうまく演じるか、非常に楽しみではあります。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B
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